第三百三十話 年越し蕎麦その八
[8]前話 [2]次話
起きて扉を開けるとそこに畑中さんがおられた、それで僕に言ってくれた。
「では今からです」
「食堂にですね」
「行きましょう」
「わかりました」
「五分前ですが」
畑中さんはこうも言われた。
「宜しいでしょうか」
「海軍ですね」
五分前と聞いてだ、僕は笑って応えた。
「それは」
「そうですね、五分前といいますと」
「かつての海軍ですね」
「今の海上自衛隊もです」
「五分前ですか」
「その精神が残っているとのことです」
今でもというのだ。
「そして今の私もですね」
「そうですね、ですが」
それでもだ、僕は畑中さんにお話してくれた。
「それで宜しかったのですね」
「今は。それじゃあ」
「これよりですね」
「食堂に行きます」
「それでは」
「はい、お蕎麦ですね」
ここでベルが鳴った、それでご飯の時間が正式に知らされた。僕はその音を聞きながら畑中さんに尋ねた。
「今日は」
「小野さんが作ってくれた」
「そうですよね」
「ざるそばも食べられますが」
「お汁のお蕎麦もですね」
「召し上がられます」
「いいですね、今日は寒いですから」
僕としてはだ。
「お汁のお蕎麦がいいですね」
「そちらですね」
「はい、ざるそばもいいですが」
実際こちらも好きだ。
「ですが」
「それでもですね」
「寒いですから」
やっぱりこれに尽きた。
「そちらを」
「それでは。具は山菜も鴨なんばも天麩羅もあるとのことです」
「いいですね」
そこまであるとだ。
「最高ですね」
「あと揚げもです」
「たぬきそばもですね」
「召し上がられます」
「余計にいいですね」
「ええ、ただ本当に」
ここで僕はあらためて思って言った。
「関西ではお蕎麦に揚げを入れますと」
「たぬきそばですね」
「そう呼びますね」
「左様ですね」
「きつねそばないんですよね」
「たぬきうどんもですね」
「天かすを入れたらたぬきうどんは」
これはだ。
「他の地域で」
「関西ではないです」
「そうですよね」
「関西ではハイカラうどんになります」
天かすを入れるとだ。
「そしてハイカラそばです」
「そちらですね」
「たぬきうどん、たぬきそばとはです」
「言わないですね」
「関西では」
「それが文化の違いですね」
同じ日本でもその違いがあるのだ。
「関西では揚げを入れていますと」
「おうどんではきつねうどんで」
「お蕎麦でしたら」
まさにそれならだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ