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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
第三百三十話 年越し蕎麦その三

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「それでな」
「楽しむんだね」
「除夜の鐘は聞かないけれどな」
「ホテルでおせちだね」
「それを楽しむな、京都の老舗の料理だからな」
 これまた楽しそうに言ってきた。
「かなりな」
「美味しいね」
「京都は金出したらな」
「美味しいものが食べられるね」
「一見さんお断りの店も多いけれどな」
「それね、京都は特に多いね」
 僕が思うにだ。
「そうしたお店が」
「そうした街ってことだ」
「そうだね」
「ちなみに南禅寺も行ったぜ」
 このお寺にもというのだ。
「それでな」
「食べてきたんだね、湯豆腐」
「やっぱり美味かったぜ」
 南禅寺の湯豆腐はというのだ。
「普通の湯豆腐じゃないな」
「そこまで美味しいんだ」
「豆腐の質が違うな」
「特別なお豆腐だね」
「幾ら食ってもまだ同じだけ食える様な」
 そうしたというのだ。
「凄いものだったな」
「そんなお豆腐はじめて聞いたよ」
「だからそれがな」
「京都なんだ」
「その代わり高いけれどな」
「だからお金を出さないとだよね」
「美味いものが食えないところなんだよ」
 京都はというのだ。
「谷崎潤一郎もそうした店でな」
「食べていたんだ」
「そうだったんだよ」
 文豪だったこの人もというのだ。
「美食家だったからな」
「大阪とか神戸にいた時もあったね」
 引っ越し魔で関西にいた時も色々移っている。
「あの人は」
「そうだったよ、実際な」
「それで京都では」
「そうした店に行ってな」
「楽しんでいたんだね」
「そうだったんだよ」
「そうだね、あの人はお金あったから」
 文豪だけあってだ。
「京都で美食三昧もね」
「出来たんだよ」
「そうだったね」
「それでその京都でな」
「これまでも楽しんできて」
「元旦もな」
 まさに日が変わると共にというのだ。
「そうしてくるな」
「それじゃあね」
「そこで羨ましいとは言わないな」
「僕も美味しいもの食べるから」
 それでだ。
「だからね」
「そうだよな、お前は」
「うん、親父もだよね」
「自分がインスタントラーメン食って美味いって思ったらな」
 親父は僕に明るく笑って答えた。
「隣で懐石食ってる人がいてもな」
「平気だね」
「そうだよ、もうそれでな」
「いいね」
「目にも入らないさ」
 隣の懐石料理もだ。
「一切な」
「その親父を見て来たからだよ」
「お前もだな」
「豪勢なおせち料理食べるって聞いても」
 その前に料亭で美味しいものを食べていてもだ。
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