エピローグ -Nexus-
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キョロキョロと見比べており、二人はやがてひそひそと囁き合う。
「ねえ、千夜ちゃん千夜ちゃん、紗夜ちゃんって、もしかしてハルトさんと並々ならぬ関係?」
「ダメよココアちゃん。こういう只ならぬ気配を感じる間柄は、部外者が入ってはいけないのよ……!」
「ハイそこ誤解するのやめーい」
ハルトのツッコミに、千夜が咳払いをした。
「さあ、とうとう甘兎庵にも新人さんが入ったわ! それもあの鬼の風紀委員が! これからビシバシ鍛えていくわよ。あの風紀委員を、この私が顎で使える……なんてすばらしいの!? ああ……楽しみだわ……!」
紗夜の後ろで、千夜が頬に触れながら喜んでいる。彼女の背景にまるで花が咲いているようにも見えてきた。
「あはは……でもよかったよ。紗夜さん、色々と」
「はい」
「……また来るね。それじゃあ、また」
ハルトはそう言って、店から出ていく。続いて出たココアに続いて、千夜の「今度はしっかりと食べていって下さいね」という声が聞こえてきた。
「待って下さい、松菜さん」
ラビットハウスへの帰路へ向かうハルトを、紗夜が呼び止めた。
甘兎庵のままの服装の彼女は、陽の光の元でも美しく見える。
「どうしたの?」
「……私……」
少し照れた顔の紗夜は、髪をかき上げる。長い髪を結んだ合間から、右耳が覗いた。
「本当にありがとうございました。松菜さんがいなかったら、私は……」
「……あの時君を助けたのは俺じゃない。それに、結局トレギアから離れたのは、紗夜さん自身でしょ?」
「それでも……松菜さんが、私を必死に守ってくれたから。だから……」
紗夜はそう言って、右手を見下ろす。令呪の代わりに彼女の手にある指輪。ハルトが付けた、エンゲージの指輪。
紗夜は大切そうに、それに左手を乗せた。
「もう一度、ギターを始めてみます。日菜のことを、劣等感として感じないギターを」
「……そっか」
「そうしたら……聞きに来てくれませんか?」
ハルトは、少し驚いた。
紗夜は、笑顔を___彼女の本当の笑顔を見るのは、初めてかもしれない___見せた。
「私が演奏をもう一度できるようになったら……貴方に聞いてほしいんです。他の誰よりも、一番最初に……」
「うん。分かった。待ってるよ」
「ハルトさん、何を話していたの?」
待っていたココアが、両腕を後ろに組みながら尋ねた。
ハルトはにっこりとしながら、
「紗夜さんが、またギターを始めるんだって。そのこと」
「わあっ! 紗夜ちゃん、ギター弾くんだ! びっくり!」
ココアはそう言いながら、ハルトへ振り返りながら後ろ歩きでラビットハウスへ進んでいく。
「紗夜ちゃん
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