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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
第三百二十九話 冬のお庭でその八

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「今夜に備えたい」
「井上さんもですね」
「そういうことでな」
 井上さんの頬が赤くなった、そのうえでの返事だった。
「少しな」
「そうですか」
「うむ、では部屋で読んでくる」
「武者小路実篤は三角関係の作品多くないですか?」
「そこは頭の中でアレンジしてな」
 そのうえでというのだ。
「二人の間柄としてだ」
「読まれますか」
「そうして今夜に備える」
 こう言ってだった。
 井上さんも書斎を後にした、僕は少し谷崎の吉野葛を呼んでいると今度はニキータさんが来てだった。
 僕の顔を見ると笑顔で言ってきた。
「純愛の漫画ない?」
「純愛?」
「そう、それない?」
 僕にこう聞いてきた。
「ここに」
「漫画ならね」
 書斎の奥の方を指差してニキータさんに応えた。
「そっちにあるよ、ただね」
「ただ?」
「恋愛系はあまりないかな」
 この書斎にはだ。
「どうも」
「そうなの」
「あるにはあるけれど」
「あるならいいわ、今日デートだから」
 それでというのだ。
「勉強したいの」
「その前に」
「そう、どんなデートをしたらいいかね」
 このことをというのだ。
「勉強したくて」
「それでだね」
「借りたいの」
「それじゃあね」
 僕はそこにあった恋愛漫画を思い出してニキータさんに答えた。
「寄宿学校なんかデートの場面あるから」
「いいの」
「コメディーの部分も多いけれど純愛だしね」
 ニキータさんが今言ったそれでだ。
「丁度いいよ」
「わかったわ、じゃあね」
「それ読むんだ」
「そうするわ、デートは何度か経験あるけれど」
 それでもとだ、ニキータさんは少し切実な顔になって僕に話した。
「今回は大晦日から新年でね」
「特別だっていうんだね」
「だからね」
「しっかり勉強して」
「それで行きたいの」
「そうだね、それじゃあ」
「ちょっと借りてくわね」
 その漫画をというのだ。
「それでね」
「勉強してだね」
「いいデートしてくるわ」
「じゃあその為にね」
「ええ、借りるわ」
 こう僕に言ってだった。
 ニキータさんはその漫画を全巻借りて自分の部屋に戻った、そしてその後で僕はまた読みはじめたが。
 一作読み終わって次は坂口安吾にしようかと思って席を立つと。
 書斎にチェチーリアさんがいることに気付いた、そのチェリーリアさんに声をかけた。
「ここにですか」
「ええ、今日はずっとここにいてね」
「それで、ですか」
「ご飯の時以外は」
 まさにその時以外はというのだ。
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