第110話『夢現』
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、誰かが話しかけてくる夢。
ずっと疑問に思っていた。意味もなくあんな夢を見続けるのも変だと。例えば、あの夢が何かを知らせるもの、それこそ「予知夢」だという可能性は否定できないのではないか。つまり、晴登は"予知能力"を持ち合わせているのでは──
「どうした? 何か心当たりがあるのか?」
「……いや、何でもない」
そこまで考えたところで冷静になる。
もしそんな力があるならば、最初に能力を調べた時にとっくに明らかになっていたはずだ。今さら発現するなんておかしな話である。
それに"予知"なんてチートじみた力、素人目で見てもレベル4は下らないだろう。それに比べて、晴登の能力はレベル3。そんな力を持っているはずがない。
今回の件はたまたま無意識下で建てていた予想や作戦が頭に浮かんだとかそんなんで、夢についても偶然同じものを見ただけじゃないのか……?
きっと気のせいだ。"未来予知"なんて、できる訳がない。
「そうか。まぁ、勝てたんだから何でもいいんだけどな。さて、じゃあお前が起きたことを部長たちに伝えてくるわ」
「わかった」
そう言い残して、伸太郎は部屋から去っていった。
部屋に1人残されてやることもないので、晴登はさっきまでのやり取りを思い出す。
"未来予知"云々はともかく、不思議な夢に関しては疑問が尽きない。だって夢の中だというのに、色も風も匂いも全て感じていたのだから。
だからと言って、あれが予知夢だと断定はできない。なぜなら、実際に予知をしたことがないからだ。あの夢が示すものでわかりやすいのは"天気"だが、精々天気予報くらいにしか役に立たな──
「……待てよ」
天気予報。晴れとか雨とか知らせてくれる便利なあれ。的中率100%だとすればどれだけ嬉しいだろうか。
──思い返すと、大雨が降った体育祭やキャンプの前には、雨が降る夢を見ていた。
偶然か必然か。サンプルが少なすぎて判断はできないが、まさかという可能性が生まれた。あの夢は天気を教えてくれる?
……だとしても、天気予報だけなんて興ざめもいいとこだ。そんな力、あってもなくても困るものではない。期待して損した気分だ。
「……今は忘れるか」
解決の糸口が見えないので、この件については一旦保留することにする。結論を急ぐ必要もないし、また今度考えることにしよう。
もうじき伸太郎が終夜たちを連れて来て、明日に向けてのミーティングが始まるはずだ。思考をそっちに切り替えておかないと。
「そういや、一昨日の夢も雨が降ってたなぁ……」
ふと、そんなことを思い出す。
またイベントが雨に邪魔されるのだけは勘弁だと、晴登はため息をついた。
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