第110話『夢現』
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さすがに非力すぎないだろうか。決して結月が重い訳ではない。悪いのはこの貧弱な腕と足腰だ。
これには終夜も少し引いており、何より軽蔑するような緋翼の視線が痛かった。
「えっと……手伝おうか?」
「い、いえ、大丈夫です! おーい2年生! 誰か手伝ってくれ!」
見かねたアーサーに気を遣われてしまったので、たまらず終夜が観客席の2年生を呼ぶ。
なんかホント、すんません……。
*
「……ん」
ふと意識が覚醒し、晴登は唸りながら目を開いた。その瞳には、見たことがあるようなないような天井が映っている。
「起きたか、三浦!」
「暁君……? ここは……」
「ホテルだ。見覚えあるだろ?」
そう言われて、ようやくこの天井の既視感に合点がいく。
ベッドの上に乗せられた自分の身体と、傍らに座っている伸太郎。
さっきまで試合をしていた気がしたが、この構図から察するに、既に試合は終わっており、その後ここに運び込まれたようだ。生憎、意識を失った辺りの記憶が曖昧で、勝敗がどっちだったか──
「はっ、結月は大丈夫?!」
「二言目にはそれかよ。心配すんな。大丈夫だよ……と言いたいところだけど」
「何かあったの?! ……うぐっ」
「おいおいまだ動くなよ。お前は魔力切れを起こしてるんだ。しばらくは寝ていた方がいい」
試合のことを思い出そうとすると、ふと結月のことが頭をよぎった。
そこで伸太郎に彼女の行方を訊いたのだが、曖昧な答えが返ってきたので、つい勢いで身体を起こしてしまう。その瞬間、猛烈な倦怠感と吐き気が催され、再びベッドインとなった。
伸太郎の言う通り、この感覚は魔力切れによるものだ。体力もかなり消費しており、今は身体を起こすことすら難しい。
落ち着け、まずは深呼吸だ。一度心を鎮める。……そして、再び伸太郎に問う。
「結月に、何があったの?」
「そんなシリアスな顔するなよ。前と一緒だ。発熱を起こしてる。ただ今回は魔力切れも相まって、少し症状が重い」
「それって治るの?!」
「だから焦るなって。部長によると、ここには治癒魔術が使える医者がいるから、1日もすれば治るだろうって。ただし、その間は絶対安静。残念だが、明日の準決勝は出場できねぇ」
「そう、か……」
危惧していた通りの事態になってしまった。いや、こうなることはもはや読めていたが。
結月はまだ"鬼化"を完全には使いこなせていない訳で、長時間使うとデメリットとして負担が体調にフィードバックしてしまう。
回復期間こそ前回と一緒だが、治癒魔術があってそれなので、やはり今回の方が症状が重いということか。
「えっと、試合はどうなった
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