第三百二十八話 大晦日その九
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「私も今こうしてだ」
「そわそわして」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「携帯で行く予定の場所をチェックしているのだ」
「そうしているんだ」
「こうしてな」
「皆もだね」
「そうだ、しかし」
「しかし?」
「今夜は冷えそうだな」
携帯を見ながら僕にこうも言った。
「気温を見ると」
「それはね」
僕も答えた。
「この時期はまず確実にね」
「冷えるな」
「冬の真っ只中だから」
それだけにだ。
「もうね」
「冷えるな」
「それは仕方ないよ」
「温かくして出よう」
「そうだね」
「寒いのは嫌いだ」
留美さんはシビアな顔と声で僕に言った。
「子供の頃からな」
「そうなんだ」
「夏の暑さも好きではないが」
「冬の寒さもなんだ」
「京都はその両方があるからな」
「ああ、夏は暑くてね」
「冬は寒い」
その京都のことも話してくれた。
「実にな」
「そうした場所だよね」
「盆地だからな」
「しかも狭いよね」
「だから熱気も寒気もだ」
その両方がというのだ。
「それぞれの季節で篭りやすい」
「それで夏は暑くて」
「冬は寒い」
そうした場所だというのだ。
「それでだ」
「冬の寒さもなんだ」
「好きではない、春と秋は好きだが」
それでもというのだ。
「夏と冬はな」
「嫌いなんだ」
「風景は両方共好きだがな」
「京都でもかな」
「京都は四季それぞれの美しさが際立っている」
ここでこう僕に話してくれた。
「平安神宮の花達や和歌、古典にある通りだ」
「源氏物語でも出てるね」
「あの作品からの自然の美がだ」
まさにというのだ。
「今も存在している」
「そうした場所だね」
「だから好きだ」
「暑さや寒さは置いておいて」
「気温は別だ」
風景つまり景色とはというのだ。
「それは好きになれない、そしてこの神戸でもな」
「寒いのは嫌なんだ」
「どうしてもな」
「そうなんだね」
「だから暖かくしてだ」
そうしてというのだ。
「外出したい」
「そうだね、神戸の冬も寒いから」
本当にだ、この街で生まれ育ってきたからこそわかる。六甲おろしは冬は神戸を徹底的に冷やしてくれる。
「十分どころかね」
「十二分だな」
「そうしてもね」
それこそだ。
「問題はないよ」
「そうなんだね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
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