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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
情の変遷
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訝しむのと、その意味を理解するのとは、ほとんど前後しないままに、同時だったように思えた。
哀傷を吐いた彼女の瞳の色をやはり、彼は知っている。永久に籠に囚われた、星伽という名の小鳥。かごのとり。哀憐の意を込めてそう告げたのは、自分自身の、今は亡き兄であった。
白雪の境遇だとか、胸の内だとかは、自分の知らないはずはない。それを自覚していたからこそキンジは、敢えてそれらに顧慮することをせずに、淡々と話題を続けていく。
「明日、ウォルトランドで花火大会がやるんだとさ。タイミング的にも丁度いいし、行ってみるのも手だろ。俺もついていってやる。……でも、人が多い場所は苦手か。なら、葛西臨海公園でどうだ?人も少ないし、景色がよく見える。外出のトレーニングだと思って行ってみろ」
そうした彼なりの顧慮というものを、白雪も分かりすぎる以上に分かりきっていると思う。だからこそ言葉を呑んで、何とも言いきれないままに、手を握りしめていた。眉を曇らせているのは、恐らく未だに、星伽の総本山──実家の制約を気にしているからだろう。境内から出て、ほんの少しでも外の世界を見せてやりたい──それだけがキンジの、彼女に対する想いであった。
「……言ったろ、お前1人じゃない。俺も護衛役でついてってやる」
その想いというのは、時にして劇薬にもなるらしい。
「……うん。宜しくお願いします」
彼の見たことのない色をしている瞳は、やけに爛々としていて、彼女は笑顔で頷いたのだった。
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