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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
情の変遷
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彷徨しているのだろうか、やや伏せがちになっていた。そのうちにアリアは顔を上げると、こう訊いてくる。


「ふた、2人だけ、で……」
「もしかして、嫌だった?」
「そういうわけじゃなくて! 少しだけ、驚いたっていうか……」


声を張り上げた彼女の肌理細かな頬には、段々と紅潮の色が差し込まれていったように見える。それでも終いには語調を落とすと、同時に視線も床に落として、呟くように返事を零した。膝頭に握った手を乗せて、その上がった眦に睫毛を覗かせながら、赤紫色の瞳を爛々として──。


「……でも、行ってみたい」


どこまで可愛らしいんだ、と思った。空一面を覆い尽くすあの群青のように果てがなくて、揺蕩う入道のように奔放で、それでいて、時折見せるこの常花のような仕草に──1度きりじゃない。何度も惹かれている。少しでも多く彼女のこうした姿を見ていたい、換言すれば、少しでも長く彼女の傍に居たい、と思う独占欲めいた感情は恐らく、名前など幾らでも思い付くだろう。それは病室で自覚したあの時から、釐毫の差異すらも見せずに、ただ鎮座しているきりだった。


「──じゃあ、行こう。2人で」
「……うん」


泡沫のように細細としたアリアの声だけが、羞恥の色を帯びて融けていった。







夏はまだ、自分たちよりも遥か向こうに立っていて、往々として歩み続ける自分たちを、なおも待ち続けている──。まだ夏とはいえない時期にも関わらず、陽線は遠慮なく照りつけてきた。それに一種の不快感を覚えた遠山キンジは、顔を顰めたのを陽射しが眩しいせいにしつつ、武偵校の校門前で2人きり、星伽白雪と立ち話をしている。周囲には、生徒の姿はまばらだった。

そんな中で、キンジは先程から執拗に辺りを見回している。校門付近、グラウンド周辺、校舎──無論、探し人が居る為に、2人はこうしてわざわざ、暇を潰していたのであった。


「それにしても昼休みっきり、彩斗とアリアは何処に行ったんだ……」
「もう帰っちゃったのかな。あの2人は単位が揃ってるから、専門科目を受ける必要もないとか、聞いたことあるし。護衛に関しても、キンちゃんに信頼を於いてるんじゃない?」
「護衛は多い方が良い。っていうか、お前こそ俺だけでいいのか? 《魔剣》が心配だろ」


白雪は彼の問いに小さく笑みを零すと、言を俟たないとでもいうように爽爽と告げる。


「ううん、全然心配してないよ。だって、キンちゃんは元Sランクだもん。今はAランクだけど。これで心配しろって言われても……。並大抵のことは、ね。ふふっ」
「……ったく。過大評価も過ぎるだろ」


とは言ったものの、キンジは内心で雀躍(じゃくやく)していた。幼馴染に信頼されているというのは、彼の
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