転んでもいいよ また立ち上がればいい
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心に闇を持つことだって、当たり前だよ! だけど、その苦しみと逃げずに向き合うことが、何よりも大切なんだよ! それでどんな結論になったとしても……!」
「向き合う相手は分かってる……でも……そんなこと……」
「私が知ってる紗夜ちゃんは、いつも堂々としてて、正しいよ? そんな紗夜ちゃんが、こんなところにいるなんて絶対に間違ってるよ!」
その言葉が契機となったのか。
紗夜の精神世界である闇の中に、冷たさが支配した。
冷たさをもたらす物は、徐々にその量を増していく。
それが雨であることを理解したのは、頬の水滴を拭ってからだった。
「私は……! 正しくなんてない……! あなたさえ……あなたさえいなければ……! 何度も何度もそう思って……」
「千回負けたって、千一回目に勝てばいいんだよ。姉妹って、そうやって強くなっていくんじゃないかな?」
「え?」
紗夜が顔を上げた。雨に濡れ切った紗夜の髪が、顔にべったりと張り付いている。
水滴を垂らしながら、ココアは穏やかな表情で続けた。
「私は、お姉ちゃんに勝ったことがないの」
ココアの背後に、姉の姿が思い起こされる。
寒さの震えもあって、紗夜の肩を握る手に力が入った。
「勉強も、遊びも。この前の公園でだって、私負けちゃったの覚えてる?」
「……保登さんも、私と同じ……?」
「うん。でも、その度に思うんだ。どうすればよかったのか。どうすれば、もっと上手くなれるのか。負けたって、人のせいにすることは簡単だよ。お姉ちゃんのせい、日菜ちゃんのせいに出来ると思うよ。でも、それじゃあいけないんじゃないかな? それじゃあずっと、自分で自分を苦しめるだけだよ」
「……」
「人のせいにしたって、何も変わらないよ。自分がいけないってことを受け入れて、歯を食いしばって思い切り頑張り続けないとね」
「それが……」
紗夜の叫びが、悲鳴となる。
「それができないから、苦しいんじゃない! 今の私は、この闇が怖い……日菜が怖い……」
「それは分かるよ。でも、怖がっているだけじゃ進めないよ」
「私は、保登さんみたいに強くない……何でも笑って受け入れることなんて……」
「悔しい時まで笑えなんて、私にも言えないよ。ただ」
ココアは大きく息を吸い込んだ。
「諦めないで」
ココアがそれを言った時、紗夜の懐に、ほんのわずかな光が灯る。
「でも……」
「足踏みしているだけじゃ進めないし、日菜ちゃんがどうこうなるのを待っていたって仕方ないよ。転んでもいいよ。また立ち上がればいい。ただそれさえできれば、きっと大丈夫!」
そう言って、ココアは紗夜に手を差し伸べた。
「だから……こんな闇の中からは、もう出よう」
しばらくその手を見下ろし
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