第十九話 両親と姪の会話その八
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「そうして書いていたのよ」
「結核で死にそうで」
「結局結核で亡くなったけれど」
事実そうなった、大阪から東京まで執筆していた作品の取材に来てそこで客死してしまっているのだ。
「それでもね」
「覚醒剤打っていたの」
「当時は合法だったから、けれどね」
「結核で死にそうな人を書かせるなんて」
「愛ちゃんもわかるでしょ」
「相当無理していたわね」
「その無理をさせるのが覚醒剤なの」
この麻薬だというのだ。
「だから使ったら」
「身体のエネルギーを無茶に出されて」
「ボロボロになるのよ、心もね」
「両方が」
「愛ちゃんも知っている通りにね」
「一週間寝ないで済むっていうけれど」
覚醒剤を使えばだ。
「一週間寝ないと」
「身体にどれだけ負担か」
「心にもね」
「そうよね」
「これだけもわかるわね」
「覚醒剤が人の身体にどれだけ悪いか」
勿論心にもだ。
「一週間寝ないだけでもそうだし」
「それだけのものを無理に出させるからね」
「覚醒剤は危ないのね」
「絶対に使ったら駄目よ」
それこそというのだ。
「誰でもね」
「末期の結核って」
咲は結核が死に至る病気のことから話した、彼女もこの知識は持っているのだ。戦前まで多くの人が死んでいることを聞いているのだ。
「もう死にそうで」
「起きていることすら難しいわよ」
咲の母は娘にも話した。
「余命幾許もないから」
「それじゃあ小説書くなんて」
「普通はね」
「かなり難しいわね」
「そんなに人に書かせる位だから」
身体の中にあるエネルギーを無理に引き出させてだ。
「もうね」
「どれだけ危ないか」
「今お話している通りよ」
「正直怖くなったわ」
咲はあらためて覚醒剤に対してその感情を抱いた。
「あと幻覚とか見えて括約筋とか緩んで」
「そっちも大変よ、電波を受信したとかなって」
「そういうのも怖いわね」
「覚醒剤で怖くないものがあるか」
父も娘に真剣な顔で言った。
「本もあるしネットでもわかるからな」
「見ればいいのね」
「そうだ、その挙句死ぬとな」
寿命を縮めてそうなってというのだ。
「骨も残らないんだ」
「身体がボロボロになっていてね」
「骨もそうなっているからな」
それ故にというのだ。
「死んでもな」
「火葬したら骨がまともに残ってなくて」
「灰だけになってな」
「それも残らないのね」
「火葬にしても残る骨は残るんだ」
焼ける骨もある、丈夫な骨は残って脆い骨は焼けてしまうのだ。これは人間以外の生きものも同じである。
「だから骨がボロボロだとな」
「残らないのね」
「全くな」
そうだというのだ。
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