第三百二十七話 お餅つきから帰ってその十一
[8]前話 [2]次話
「何の為に生きているのか」
「そうもさえなりますね」
「会ってもこんな人にはなりたくない」
「そう思われるだけです」
僕がというのだ。
「まことに」
「そうですね、けれど才能は色々ですね」
僕はここでこうも思った。
「文学や音楽、スポーツの才能に」
「他にもですね」
「色々な才能がありますが」
それでもだ。
「嘘を吐く才能、泥棒の才能に」
「それにですね」
「面白くない本を書く才能もあるんですね」
「世の中の役に立たない才能もありますね」
「そうですね」
このことも実感した。
「中には」
「そうした才能は発揮しないことです」
「誰の役にも立たないですから」
「そうです、本人の為にもなりません」
「全くですね」
実際その作者さんは非難轟々だ、本は売れていてもどうもそれ以上に嫌いな人が多い。面白くない本を書く天才なら当然だろう。
「他にも才能があるなら」
「そちらを磨くべきです」
「全くですね」
「はい、ですが」
「それでもですね」
「面白くない本を書く才能は」
畑中さんは僕に話してくれた。
「稀有な才能ではあります」
「そうですよね」
「しかも読んでいて腹も立ちますね」
「実際読んでいてそうなります」
ただ極端につまらないだけでなくだ。
「まさに」
「それはまさにです」
「稀有な才能ですか」
「そうそうありません」
「そうした意味で貴重な人ですね」
「誰の何の役にも立たないどころか」
畑中さんは僕にさらに話してくれた。
「有害なさえありますが」
「稀有な才能ですね」
「はい」
まさにというのだ。
「まことに」
「有害でもですね」
「私もそうした人ははじめて聞きました」
「畑中さんでもですか」
「そうです、ですが人は才能はおそらく出していいものとです」
「そうした出して悪いものをですね」
「両方持っているのでしょう」
人間にはプラスとマイナスがある、その両方でそれぞれ才能を持っているのではないかというのだ。
「ですから」
「そうした人はですか」
「いい才能を見付けてです」
「その才能を開花させていると」
「そうはならなかったでしょう、まあ犯罪を犯すよりはです」
それよりもというのだ。
「ましです」
「犯罪よりはですね」
「まだ」
「犯罪だとどうしようもないですか」
「まことに。ですがない方がましであることはです」
このことはともお話してくれた。
「事実でしょう」
「そうですよね、本当に」
「そうした人の本は一切読まれる必要がなく読まれるなら」
「それならですね」
「まことに宮沢賢治は素晴らしいです、幾つになってもです」
例え何歳になってもというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ