第三百二十七話 お餅つきから帰ってその八
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「それで、でしたね」
「子供は多く死んで」
「癌になっても」
「助かりませんでした」
「それに脚気や梅毒や結核も」
当時の日本はこの三つの病気も大きかった。
「ありましたね」
「その中で九十歳です」
「奇跡みたいですね」
「今も充分長寿です」
「それでもですね」
「そう言いました」
この世を去る時にだ。
「あと十年、北斎でも九十まで描いて」
「辿り着けなかったんですね」
「そしておそらくですが」
「そのあと十年でもですね」
「百歳になってもです」
それでもとだ、畑中さんは僕に話してくれた。
「北斎はそう言っていたでしょう」
「本物の絵描きになれなかった」
「その様に」
「そうしたものですか」
「どのことも同じです」
まさにというのだ。
「あらゆることで、です」
「人は極められないですね」
「はい、どのことも果てがなく」
「人には寿命があるので」
「果てには至れないです」
「そういうものですね」
「私はそう思います」
「剣術もですね」
「そうです、剣術でわかりました」
あらゆることに果てがないことがというのだ。
「免許皆伝になっても」
「まだ先があったんですね」
「そうでした、そして今もです」
「剣術の果てにはですか」
「至っていません、まだ遥か先です」
「剣術の果ては」
「そして文明もです」
これもというのだ。
「さらにです」
「先がありますか」
「今の文明よりも」
「まだまだ進歩しますね」
「今の科学文明は確かに凄いですが」
それでもというのだ。
「まだまだです」
「よくなりますか」
「現代の科学で全てを語れないですね」
「はい、そんな本もありますね」
ここで畑中さんにこう返した。
「空想科学何とか」
「まさに現代の科学で全てを語っていますね」
「漫画やアニメや特撮について」
「そして多くの批判を受けていると聞いています」
「子供の夢を壊すんじゃなくて」
そうしたキャッチフレーズだけれどだ。
「現代の科学が全てとして」
「それで未来の技術等を否定しているので」
「間違いだらけの出鱈目で」
そうしてだ。
「とんでもなく面白くないんです」
「読んでも」
「はい、これ以上はない位に」
面白くない本を書くということについても才能が必要だろう、だとするとこのシリーズの作者はそのことについて人類史上稀に見る天才だ。音楽の分野ではモーツァルトだがこちらではこの人がそうだ。
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