壊されていくライブ
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…あれ、お姉ちゃんなんだよ!?」
「分かってる!」
だが、ハルトのピシャリとした言葉に、日菜は黙った。
「俺が助ける! 絶対……助けて見せる!」
「でも……ハルト君!」
「いいからッ!」
ハルトの口調が強まる。
「紗夜さんは助ける……! 絶対助ける! だから、今は何も聞かないで、逃げて!」
茫然とした日菜。彼女はやがて戻って来たイヴに連れ出されるまで、ずっとハルトを見つめていた。
「へえ……いい判断じゃないか?」
トレギアは、出ていく日菜を見送りながら言った。
「邪魔者はいない方がいいからねえ?」
「ここから先には、通さない」
「いいよ。今は氷川紗夜の心は完全に封印している。彼女の意識はもうないよ」
トレギアは首を振る。
「別に彼女の願いを叶えるために躍起になる理由もない。所詮は、私の強化のための礎でしかないのにね」
「お前……紗夜さんをそんな風にしか思ってないのか!?」
「ああ」
トレギアはまた、マスクを外す。完全にトレギアに乗っ取られた紗夜の姿が、一瞬だけマスクの下から現れる。
「人間の絆も……簡単に壊れる」
すぐにマスクを着けなおし、紗夜はトレギアへ変貌する。
ハルトは歯を食いしばった。
「……人の心を弄ぶお前を、俺は許さない!」
「許さない……? それは怖いねえ?」
トレギアはくすりと笑いながら、後ずさっていく。
「だったら、援軍でも呼ぼうかなあ?」
だが、彼が下がった足元に、闇が集う。
まるで沼のように溜まった闇が二つ。そこから、何かが抜け出てきた。
「何だ?」
立体となった闇が形作るのは、二体の人型。
ココアが変身したヒューマノイドにもどことなく似ているそれらは、それぞれ唸り声を上げて、ウィザードへ敵意を向ける。
「この二体は……?」
赤のヒューマノイドと違って、目は白ではなく、黒一色に塗り潰されている。
それぞれが黒を基調とした人型。
片方の頭部は、中央のとさかと二本の角が生えており、どことなくピエロにも見える。赤と黒が、箇所ごとに左右反対に塗られており、一見派手にも思えた。
そしてもう一体。同じく、赤と黒の二色で色分けされているが、ピエロと違って左右は対照的。ピエロほど奇抜な外見をしてはいないが、負けず劣らずの不気味さを持ち、その腕には鋭い鉤爪の武器が装備されている。
「ファウストとメフィスト……まあ、君を葬る悪魔、とでも言っておこうか」
トレギアは指を鳴らした。
すると、ファウストとメフィスト。二体の人型は、それぞれ、翼もないのに飛び上がる。
それぞれ通路の天井を貫き、どこかへ飛び去っていった。
「え……?」
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