第四章
[8]前話
「姫路城の天守閣にはそんな話があったな」
「あとあのお城幽霊がいるって」
「お菊井戸か」
またわかった。
「それか」
「それで川に河童が出て海には海坊主が出るんだよ」
「そうか、そうした話は何処でもあって」
孝仁は孫の話を聞いて笑って言った。
「今もあるんだな」
「あれっ、お祖父ちゃん嬉しいの?」
「ちょっとな」
孫にその笑顔で答えた。
「嬉しいな」
「どうしてなの?」
「昔も今もそこは変わらないなと思ってな」
「それでなの」
「祖父ちゃんの祖父ちゃんも言った」
今は亡きその祖父もというのだ、十年前に亡くなっていたのだ。
「そうな、そしてな」
「今もなんだ」
「変わらないこともあるんだな」
「昔からなんだ」
「そうだ、時代は変わってもな」
それでもというのだ。
「変わらないものもあって妖怪とか幽霊もな」
「変わらないんだ」
「そうした話はな」
「そうなんだ、けれどね」
孫は自分の手をつないでいる祖父に問うた。
「妖怪とか幽霊っていないって言う人もいるけれど」
「ああ、そう言う人もいるな」
「偉い先生とかね」
「そう言う人もいるさ、けれど祖父ちゃんはな」
孫のその顔を見て優しい声で話した。
「いるかも知れないってな」
「思うんだ」
「だから昔から皆言うんだろ」
「見てないのに?」
「見えるものが全てじゃないんだ」
そうだというのだ。
「だからな」
「妖怪も幽霊もいるんだ」
「ああ、そう思うぞ祖父ちゃんは」
「そうなんだね」
「見えるものが全てじゃないんだ、思うものだってな」
そういったものもというのだ。
「いるんだろうな」
「そうなんだね」
「世の中はな、じゃあ家に帰っておやつを食べるか」
孫の為に買っておいた団子を出そうと思った、そして実際にだった。
祖父は孫を連れて家に帰り団子を出してやった、そして一緒に団子を食べながら今度は住んでいるこの町の昔話をした。そこは彼が子供の頃妖怪や幽霊と一緒に見ているものだった。
幻想今昔 完
2021・4・14
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