第二章
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「あそこは人が自殺したんだ」
「そんなことあったんだ」
「若い奥さんがな、それでその奥さんが悪霊になってな」
「あそこにいるんだ」
「あそこに入ったら祟られるぞ」
こう言うのだった。
「だからな」
「行ったら駄目なんだ」
「絶対に行くな」
孫に畑仕事の中で話した、そして孝仁は学校や塾でこの話を祖父から聞いたと言って真剣に怖がりつつも何処か嬉々として友人達に話していった。
何時しかそこにさらに話がついていった。
「一丁目のハル婆さん百歳超えているらしいぞ」
「不死身になってるらしいな」
「二丁目の池には蛇の化けものがいるぞ」
「ダムの方に十メートルの鯰がいるぞ」
「あそこには白い猿がいるぞ」
「山奥にまだニホンオオカミがいるぞ」
「ツチノコもいるぞ」
こんな話を子供達の間で話した、そして先生も学校で言った。
「山にはあまり行かないでね」
「山?」
「やっぱり鬼がいるんだ」
「山姥がいるんだろ」
「天狗だろ」
「毒持ったツチノコがいるんだよ」
「色々いて危ないから」
先生は蝮や蜂や猿、熊のことを考えて言った。
「だからよ」
「ああ、やっぱりあそこ鬼がいるんだな」
「山姥がいるんだな」
「天狗もいてな」
「ツチノコもいるんだな」
「ニホンオオカミ見たって人もいたな」
「ニホンオオカミのうんこ見たって人もいたぞ」
子供達は先生が言ったものとは別の存在を見て言った。
「やっぱり中に入ったら危ないんだな」
「じゃあ行かない方がいいな」
「行ったら鬼か山姥に食われるぞ」
「ニホンオオカミに襲われるぞ」
「兎に角山には行かないでね」
若い女の先生だった、その為か子供達がこうしたことを言った時にどう対していいかわからなかった。それでこう言うだけだったが。
ここから話に尾ひれがついた、山には鬼や天狗や山姥がいてだった。
ツチノコにニホンオオカミもいる様になった、それで山は魔境の様になった。
それにだった。
「四丁目のあの家行くと死ぬぞ」
「悪霊に殺されるぞ」
「そうなってしまうぞ」
「だから近寄るな」
「一丁目の婆さん子供生贄にしてるんだろ」
「絶対にあの婆さんの家に近寄るな」
「三丁目に変な奴出たらしいぞ」
子供達は口々に色々なことを話した、話に尾ひれがついてさらにだ。
話される、しかし。
どの話にも根拠はなかった、だが孝仁達はそうした話に興じていった。そうして子供時代を過ごしていった。
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