第一章
[2]次話
幻想今昔
谷田孝仁は奈良県の田舎と言っていい地域に住んでいる。
周りには山や沼や水田が多くあり自然豊かと言っていい。家も古く代々そこに住んでいて農家を営んでいる。
祖父の孝志は学校が終わるとよく家の仕事を手伝う孫に笑って話した。
「近くの沼に行ったら河童がいるぞ」
「河童?いるの?」
「ああ、いるぞ」
その細長い皺だらけの麦わら帽子がよく似合う顔で話した。
「それで狐や狸もいてな」
「ああ、見たことあるよ」
「化かすんだぞ」
「まさか」
「いや、あいつ等本当に化かすぞ」
やはり笑って話した。
「貉だってな」
「貉って穴熊だよね」
「そうだ、それで山奥に行ったらな」
祖父はさらに話した。
「山姥がいてな」
「人食うとか?」
「そうだ、それで鬼や天狗がいてな」
そうした妖怪もいるというのだ。
「悪さをするぞ」
「嘘だよね」
「嘘なものか、寺の裏には一つ目小僧だっているしな」
祖父の話は続いた。
「ろくろ首だって出るぞ」
「首が伸びるんだ」
「それで驚かせるぞ、夜には一反木綿がひらひらと飛んでな」
夜の話もした。
「驚かせるぞ」
「妖怪一杯いるんだ」
「そうだ、あちこちにいるんだ」
妖怪、それはというのだ。
「妖怪はな、学校でもだぞ」
「学校にもいるんだ」
「あの小学校は祖父ちゃんも通ってたがな」
「それ何時?」
「六十年前、まだ昭和になってすぐだったな」
その時だったというのだ。
「まだ木の校舎でな」
「物凄い昔じゃない」
「お墓の上に建てられたしな」
孫にこのことも笑って話した。
「幽霊だって出たしな、理科室の骸骨の標本は夜動いたんだ」
「えっ、あの骸骨動くんだ」
「あれは祖父ちゃんが子供の頃からあったしな」
それでというのだ。
「その時から言われていたんだ」
「まさか」
「いや、そのまさかだ」
祖父は孫に真剣な顔で話した。
「祖父ちゃんの友達が動いているのを見たんだ」
「そうなんだ」
「そいつはこの前死んだがな」
「動いてるの見たんだ」
「そうだ、そいつが夜に学校に忍び込んだらしい」
それでというのだ。
「そこで見たと言っていた」
「そうだったんだ」
「あと音楽室のベートーベンの絵も動くぞ」
祖父は学校の話をさらにした。
「夜にな」
「ああ、あの絵もなんだ」
「あの絵も祖父ちゃんが子供の頃からあってな」
それでというのだ。
「夜になるとな」
「動くんだね」
「笑うらしいぞ、それと四丁目の誰も住んでいない家あるだろ」
今度はこの話をした。
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