第百六話 夏侯惇、妹を救うのことその三
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防ぎつつ己も技を繰り出す。夏侯淵はそれも防ぐ。
その中でだ。クリスは。
楽しげに笑い。こんなことを言った。
「お姉さんってさ」
「何だ?」
「大人だけれど純情だね」
こんなことを言ってきたのだ。
「清純派だよね」
「何故そう言う?」
「白だから」
旧にだ。クリスは色を話に出してきた。
「下着、見えたよ」
「さっきの蹴りでか」
「うん、見るつもりはなかったけれどね」
「戦いの中でそんなことを気にはしない」
「見えてもいいんだ」
「見られて恥ずかしくない筈がない」
頬を微かに赤らめさせてだ。夏侯淵は答えた。
「だがそれでもだ」
「戦いの中ではだね」
「気にしてはいられない」
そういうことだった。
「どうしても見られたくないなら下にさらに穿く」
「ズボンを?」
「そちらの世界ではスパッツというのか」
話が急にあちらの世界めいてきた。
「それを穿けばいい」
「ああ、あれね」
「しかしあれは邪道だ」
スパッツを穿くということはだ。そうだというのだ。
「好きになれない」
「じゃあ見える場合は」
「見るがいい。私もこうした場合に見られても怒りはしない」
「普段は?」
「見た者は成敗する」
その場合はだ。そうするというのだ。
「そういうことだ」
「成程ね」
「あと一つ言っておく」
攻防を続けながら。今度はだ。
夏侯淵はこんなことをだ。クリスに告げた。
「私の下着だが」
「それのこと?」
「清純と言ったがいつも同じだ」
「色は白なんだ」
「白が一番いい」
何気に自分の下着の趣味を話している。
「そう思っている」
「確かにね。似合ってるよ」
「白でいいな」
「うん。大人が白なのもいいね」
「戦いの中なら見ればいい。そうしろ」
「そうさせてもらうね」
こうしたやり取りをしながらだった。彼等は闘っていた。そしてだ。
闘いは続きだ。その中でだ。
夏侯淵の軍は少しずつ追い詰められていっていた。山の中でだ。
一人、また一人と倒れていきだ。囲まれていっていた。
兵達がだ。槍や剣を手にだ。白装束の者達と戦いながら話していた。
「援軍はまだか?」
「ああ、まだだ」
来ていないというのだ。援軍は。
「ガルフォードさんが呼びに行ったけれどな」
「それでもまだか」
「援軍を呼んですぐに来れるものじゃない」
やはり到着まで時間がかかる。そういうことだった。
「だからだ」
「今はか」
「耐えるしかない」
これが結論だった。
「仕方ない」
「そうか。辛いな」
辛いともだ。彼等は言葉を漏らした。
だがそれでもだった。敵は。
まだ出て来ていた。彼等の戦いは続きだ。
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