壱ノ巻
由良の縁談
3★
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ないでくれよ。ただでさえ無理がある設定なんだから・・・」
「あら大丈夫よ。最悪バレた時だってなんとでも言い訳ができるから」
あたしは目の前に垂れ下っている被きを引っ張りながら答えた。辻が花染が美しい月草色のこの被きは正真正銘佐々の御内室のものである。ちなみに本人には無許可でちょっと拝借してきた。
ばれても高彬がちょこっといびられるだけであたしは痛くもかゆくもないしね。佐々家は子沢山だけど御内室は実子の高彬を猫かわいがりしてるからそんなに酷い目にもあわないだろうし。
「よっしゃッ!由良のために気合いいれていくわよ!」
はぁ…と前で高彬のため息が聞こえた。
「母は先日、病を得ましてその際の傷が治りきらず顔に残っております。失礼と承知の上ですが、面を隠す御無礼お許しいただきたい」
「私も女心を知らぬ男ではない。気にいたすな。忠政どのの御内室、面を上げられよ。」
あたしはゆっくりと顔を上げ被き越しに目の前の徳川の嫡男を見た。
瞳はすっと涼しく横に伸び、鼻立ちは高く全体的にさわやかなんだけど、顔の輪郭がしっかりとしていて男らしく草紙にも出てきそうな今時の伊達男!って感じ。
声も澄んでいて、まるで夏の木陰みたいな耳通りのいい声。
はれーいい男じゃないの〜意外だわ…。
由良が嫌がるって言うからてっきりもっとこう…あいや別に顔で判断するわけじゃないんだけど!決して!最初に想像してたのが悪すぎたというかうにゃうにゃ…。
心の中で誰にともなく弁解していると横の高彬にしっかりしてよと言うふうに肘でつんとつつかれた。
わかってるわよ!この瑠螺蔚さまは外見なんかじゃ惑わされないんだからね?おほん。
気を取り直して徳川の嫡男に向き直る。
「傷が痛みましたら遠慮せずおっしゃってください。今日連れてきている私の従者のなかにはささやかなれど薬師の心得があるものもおりますから」
「その御心遣い、誠に有難く存じます。ですが病の面影は最早見目に残るのみ。痛みはなかれど目障りではあります故このままでご容赦を」
「それは勿論先ほども申した通り。さてでは本題に入りましょうか、御母君」
にっこり笑いながら嫡男はそう言った。その瞳はひたとあたしを見据えて形こそ弓形になっているのにその実こちらを注意深く観察している
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