壱ノ巻
由良の縁談
3★
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「や、やっぱり駄目だよ、瑠螺蔚さん」
「何言ってんの。あんた一応男でしょっ、しっかりしなさいよ。それに、あんた前田家に来たとき言ってたじゃない。天地城に乗り込んで御屋形様を怒鳴りつけたりだってしてしまうんだろう、って」
「いやだってそれはモノの例えで…」
「もういいじゃないの。本当に御屋形様を怒鳴りつけるわけじゃあるまいし。ほら!いつまでもうだうだ言ってんじゃないの!」
あたしは高彬の頭をぱこんと叩いた。
それでも高彬はまだぶつぶつと呟く。
「やはり由良の為とは言え…」
「あああ、瑠螺蔚さんに言った僕が馬鹿だった…」
「上手くいかなかったら佐々家は終わりだ…」
と、頭を抱えて呻いてる始末。
ったく。
情けないったらありゃしない。
今あたしと高彬は天地城に来ている。
モチロン、由良の縁談を断るために。
腰砕けの高彬は恐れ多いだの何だの言ってるけど、自分の妹が嫌がってるってのに、兄が動かないで一体どうするつもりなのか。これだから男は。
あたしはいつも着ている小袖と違って、ずるずると引きずってる裾をちょいと持ち上げた。
ああ、うっとおしい。これだから正装って嫌いなのよね!
「瑠螺蔚さん!」
とたんに高彬に窘められる。
「そんなことしちゃ駄目だよ」
「知ってるわよ」
暑いし、重たいし、最悪。
「母上になりすますのなら、もっとおしとやかにしなきゃ」
「っさいわね。わかってるわよ」
あたしは御屋形様の御座せられるここ、天地城に由良の縁談の相手、徳川家の嫡男を呼び出した。あ手続きとかめんどくさい事はみんな当然高彬ね。
今は徳川の嫡男がいる部屋に向かっているところである。
なんで佐々家の姫の縁談に家が隣ってだけで血筋的には全く関係ないあたしがこうしてしゃしゃり出てるかっていうと、このあたしが、由良の母、佐々家の奥方になりすましてその嫡男に会っちゃおーっていう計画なわけなのよ。
ま、流石に無理があるかな〜とは思ったんだけど、佐々家の奥方は引きこもりがちであんまり他人と顔を合わせたことがないって言うから、大丈夫でしょ。
なにより第三者として手をこまねいているのはあたしの性格上ちょっと無理な話よ。
「瑠螺蔚さん。絶対に!その被き取ら
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