暁 〜小説投稿サイト〜
非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第109話『隠された力』
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したそれによって、必殺技を受けることに成功している。
これだけでも十分問題ではあるが、この"バリア"を知覚できなかった場合、彼らの奥の手は曝されていないことになり、切り札まで使った晴登たちが圧倒的不利に陥ってしまうのだ。


「大体、魔術師の戦闘(バトル)において、最初にやるのは相手の能力(アビリティ)を正しく知ることだ。それなのに、相手の能力(アビリティ)を誤認して必殺技を撃って、そして防がれちまうなんて悪手も悪手、大悪手だ」

「相手の能力(アビリティ)を正しく知ること……」

「要は情報戦みたいなもんだ。それがわかっているからこそ、実況も下手に選手の能力(アビリティ)をバラすような真似はしてないだろ?」

「確かに……!」


終夜が言うことは全くその通りであると、伸太郎は納得する。言われてみれば、ジョーカーはどの試合においても、選手の紹介で能力(アビリティ)に関することを言っていない。運営側である彼が、事前に選手の能力(アビリティ)を知っていてもおかしくないのに。
つまりこの本戦では、ただ戦闘能力を競うのではなく、相手の能力(アビリティ)を探る情報戦も兼ねているという訳だ。思ったより奥が深い……!


「これは対魔術師について教えてなかった俺の落ち度だ。もっとも、今回はそもそも相手が1枚上手だったが。──この試合、厳しいぞ」







「く、ぅ……」

「結月! 大丈夫?!」

「うん、何とか……。念のため、魔力を残して正解だったよ……」


膝をつきそうになる結月を支えながら、晴登は声をかける。彼女の表情は重苦しく、息遣いも荒い。明らかに大丈夫ではなかった。
魔力を残しているとは言ったが、ほとんど使い切ったのではなかろうか。それでも辛うじて倒れていないのは、"鬼化"の恩恵なのかもしれない。


「結局、なぜ防がれたのかはわからない。でも、最悪の状況になったってことだけはわかる」


【タイタン】の2人は怪我ひとつなく、逆にこちらは結月が限界に近い。トドメだと思って、晴登もかなり魔力を消費してしまっている。もう"疾風の加護"もここまでだ。
こんなことになるとわかっていれば、もっと抑えたのに……。


「……いや、過去をくよくよしても仕方ない。大事なのはここからだ」


自分にそう言い聞かせ、何とか前を向こうとする。しかし、手錠越しに結月の苦しさが伝わり、嫌な汗が頬を伝った。

どんな手段かはわからないが、少なくとも相手は結月の必殺技すら防御することができる能力(アビリティ)を有している。そしてそれは"斧"でも"爆破"でもない、3つ目の魔術だろう。なぜならあの時、"斧"は封じていたし、"爆破"はそもそもされなかったのだから。


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