パステルパレット
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のところから引っ張り出す。一瞬の迷いもなく、警察の番号を入力した。
「申し訳ありませんが、ここは通報させていただきます」
「だから、俺は……!」
「お待たせしました! 連れてきましたよ」
「あれ? ハルト君じゃん!」
麻弥に続いたその声は、ハルトには救いに聞こえた。
水色のステージ衣装に身を包んだ日菜が、ハルトを見つめていた。
「日菜ちゃん……!」
助けられた。
ハルトは大きく肩を下ろしながら、安堵の息を吐いた。
「どうしてハルト君がここに?」
「いや、ちょっと君に伝えたいことが……」
「日菜ちゃん、今は本番前よ」
日菜との会話になる前に、千聖が突っかかる。
「知り合いと話すのは後にして。あと麻弥ちゃんも、終わったらお説教ね」
「へ……?」
茫然とする麻弥。心の中で彼女に謝罪しながら、ハルトは続けた。
「……少しだけ、時間をくれない? 紗夜さんのことで……」
「お姉ちゃん!?」
紗夜の名前を出した瞬間、日菜が勢いよく振り向いた。
「お姉ちゃん、来てくれるの!?」
「それが……」
「日菜ちゃん!」
また咎める千聖の声。
だが、日菜は「大丈夫大丈夫」と、どこかぎこちなく言った。
「この人、すっごくるんってくる人だから! ねえねえ、あたしに用があるみたいだし、ちょっとだけ話してくるね」
「日菜ちゃん。今はもうライブ前なのよ? 部外者と話すのではなく、ライブに向けて集中しなければならない時よ」
「大丈夫だよ。すぐに戻ってくるから! ほら、ハルトくん、行こっ!」
日菜はそう言って、ハルトの手を取り連れ出した。
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