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『外伝:赤』崩壊した世界で大剣豪とイチャコラしながら旅をする
覚悟-ころす-
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口ごもる。
少し考えたような素振りをして、彼女はこう話した。

「私が言うのもアレだけど…大和くん。」
「…。」
「人殺しには…慣れないで。」
「…。」

手を、両手で優しく包まれる。
ついさっき人を殺した俺の手を、武蔵ちゃんは優しく握ってくれていた。

「悩んでた…よね?人を殺せないこと。」
「…。」

無言のまま、頷く。

「殺すことに抵抗があるのは仕方がないの。だって人間だもの。でも、それを無理矢理乗り越えて、逆に殺しに慣れてしまうのはもっとダメ。」
「…。」
「あの時の大和くん…覚えてる?殺すこと第一に考えてなかった?」

そう言われ、思い出す。
確かにそうだ。あの時の俺は積極的に殺しにかかってた。
守るためじゃない、生きるためじゃない…あの時俺は確かに、何かに呑まれ、殺すことしか考えていない。

「心が…弱いんだろうな…俺。」
「逆。弱ければもうとっくに…大和くんは人の道から抜けてる。強かったからこそあれこれ悩んで、考えてた。」
「…。」

肩に両手を置かれ、今度は俺の目をじっと見てくる。

「約束したんだ。」
「約束?」
「ああ、あの時会った陸と。この力は大切なサーヴァントを守るために使おうって。」
「…そっか。」

生きるため、守るため、
そう思えば、少しは気が楽になると思う。
以前陸にそう言われた。

しかし、また別の問題が浮上してくる。

「でも…怖いんだ…。」
「…?」
「あの時…人を殺した時、俺は…満たされてた。」

殺し。
1度それに手を染めてしまうと、人は戻れなくなる。
人を斬ったあの時、それが気持ちいいと感じてしまった。
サラリーマン時代には感じられなかった達成感が身体を満たした。
筆舌に尽くし難い快感が身体中を駆け抜けた。
今では、あの肉を斬る感覚が愛おしく思える。

「俺は…俺は…!」
「もう、いいの。」

弱音を吐き、己の弱さに涙を流す俺。
軟弱者にしか見えない今の俺を武蔵ちゃんはただ。

「あのね大和くん。辛かったら辛いって言って。その為のサーヴァント()でしょ?」

俺を抱きしめる。
彼女の温もりが、身体中で感じる。

「…ごめん。俺、強くなるよ。」
「…うん。」

初めて、弱音をはいたような気がする。
心の中に溜め込んでいたものが吐き出されて、スッキリしたような気分だ。

「ただ強くなるだけじゃない。俺は…守るために強くなる。そう決めたんだ。いつか背中を預けられるようになるくらい、強くなるからさ。」

しばらくこうしていたい。
それを言葉にせずとも、武蔵ちゃんは何も言わず抱きしめる力を強くした。

「じゃあ、強くなりましょ。それまで私、ずっと付き合うから。」

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