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おぢばにおかえり
第六十六話 好き嫌いその四

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「それでもね」
「ですよね、よかったですよ」
「そんなににこにこする理由がわからないけれど」
「そのうちお話しますから」
「そのうち?」
「はい、それで海のお話ですが」
 阿波野君は私にまた言ってきました。
「奇麗ですね、何度見てもいいですよ」
「阿波野君奈良だから余計によね」
「ここは自然の砂浜ですよね」
 今度は足元を見ていました。
「そうですよね」
「そのことで有名なのよ」
「そうですよね、奈良は海がないんで」
 阿波野君が住んでいておぢばもあるこの県はそうなのです、周りは山ばかりです。
「それで僕海好きなんですよ」
「海に憧れがあるのね」
「はい、ですから津波とか言われても」
 それでもというのです。
「ピンとこないですし」
「そうよね、やっぱり」
「それでこうして海を見ていたら」
 そうしたらというのです。
「それだけで嬉しくなるんですよ」
「そうなので」
「それで、ですけれど」 
 また海を見ながら私に言ってきました。
「これからもずっと見ていきたいですね」
「海をなのね」
「先輩と」
「私と?」
「はい、ずっと」
 私の方を見ての言葉でした。
「駄目ですか?またこの海一緒に見て」
「いいわよ、何度でも案内させてもらうわ」
 ちょっと言っている意味はわからなかったですが答えました。
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