第十八話 ゴールデンウィークを前にしてその五
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「子供よ、全く教育も躾も受けていない」
「それじゃあ何なのよ」
「何でもないわよ」
愛の今の返答は実に素っ気なくかつ冷淡なものだった。それこそ公衆便所の脇に生えている雑草を見る様なものだった。
「それこそね」
「幾つでもなの」
「全く成長してないから」
子供の頃からというのだ。
「それじゃあね」
「何でもないのね」
「人は学んで経験をして何かになるの」
「そうした人は何を学んで何を経験したか」
「何もしてこなかったからよ」
学ぶことも経験することもというのだ。
「何でもないのよ」
「じゃあ価値ないの」
「かもね」
愛は否定しなかった。
「生きる価値もね」
「ヤクザ屋さんみたいに」
「前も言ったけれどどうしようもない人も色々よ」
ヤクザ者だけではないというのだ。
「こうした人もね」
「どうしようもないのね」
「そうよ」
まさにという返事だった、今度は。
「何の徳分も備えなかった」
「生きていて」
「幼稚なまま生きていってね、それで童心もね」
この徳分もというのだ。
「忘れたね」
「童心は必要なの」
「子供の時の感性や純粋さもね」
こうしたものもというのだ。
「やっぱりね」
「人には必要なの」
「こうした人は悪い意味で子供のままなの」
「悪い意味で」
「そう、幼稚なままでね」
それだけでというのだ。
「歳を重ねただけなの」
「それってね」
「なりたくないタイプね」
「そのうちの一つね」
まさにとだ、咲も答えた。
「私にしても」
「なりたくないって思えばね」
「反面教師にすべきね」
「そうよ、なりたくない嫌いだって人を見て」
「ああはなるまい」
「そう思うことよ、まあ世の中そうした人を見て攻撃する人もいるけれどね」
「いるわね、嫌いになったら徹底的で」
咲もそうした人物について知っているので応えた。
「もう容赦しないって」
「そんな人もいるけれどね」
「かちかち山の兎みたいな人ね」
「あの兎咲ちゃんどう思うかしら」
「絶対に傍にいて欲しくないわ」
咲は愛の問いに即答で答えた。
「何があってもね」
「敵になったら嫌でしょ」
「平気で騙すし後ろから攻撃するしね」
「滅茶苦茶残虐でしょ」
「背中に火を点けるしね」
薪にそうしたことは童話にある通りだ。
「それで背中焼いてね」
「その後で身分偽って来て背中に辛子塗るでしょ」
「火傷だけでも酷いのに」
「あの辛子もかなりよ」
そこに陰湿な悪意が存在してることは言うまでもない。
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