第一章
[2]次話
見えなくても幸せに
その犬を見てだった。
ジョン=アシュモアとアンの夫婦は悲しい顔になった。
「随分とな」
「悲しそうね」
「それも当然だな」
夫は口髭のある顔で白色の巻き毛の黒い優しい目の大型の雄犬、家に来たばかりの彼を見て言った。
「随分と酷い目に遭ってな」
「虐待ね」
「それで失明までしたんだ」
見れば犬は何も見ていない感じだ。
「それだとな」
「こうして怯えてね」
「何をされるかと思うこともな」
「当然よね」
優しい顔立ちの妻も言った。
「それなら」
「何でも脳に損傷を受けて」
そしてというのだ。
「失明して損傷からくる発作もあって」
「苦しんでいるのね」
「虐待のトラウマもあってな」
「前の飼い主は最低ね」
「全くだ、しかしな」
「それでもね」
「これからは違う」
「ええ、絶対によ」
母によく似た娘のベッキーも言ってきた、見れば茶色の雄のポメラニアンを抱き締めているがそのポメラニアンは。
「アーチャーもね」
「そうだな、目が見えないんだ」
「キャン」
確かにだった、アーチャーも。
見えていなかった、それが動きにも出ていた。父はその彼も見て話した。
「同じだ」
「この子もね」
「名前はアンガスにしよう、雄だし」
父はここで彼の名前も決めた。
「そしてな」
「そのうえでね」
「これからは一緒だ」
「幸せにしてあげましょう」
妻はアンガスと名付けられた彼を見て言った、怯えているので今は彼を気遣って撫でなかった。だが三人とアーチャーで。
アンガスを癒しだした、いつも誰かが共にいて。
優しい声をかけてご飯を食べさせてだった。
ブラッシング等もして労わった、そうするとだった。
「随分とな」
「ええ、落ち着いてきたわね」
夫婦でアーチャーと一緒に寝ているアンガスを見て話した。
「最初は随分怯えていたけれど」
「それがな」
「もうな」
「ああしてゆっくり寝る様になったわね」
「本当によかった」
夫は心から言った。
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