第二章
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イリヤはこのことを心から喜びよく周りに話した。
「カナダガンの夫婦ってそうなんだよ」
「へえ、そうなんだな」
「人間は結構別れるけれどな」
「離婚なんてしょっちゅうなのに」
「カナダガンは違うか」
「それは立派だな」
「浮気なんかしないな」
イリヤはこうも言った。
「まず」
「それで旦那の退院もか」
「それもちゃんと待ったんだな」
「手術の時も立ち会おうとして」
「本当に心配して」
「人間もそうでありたいな」
彼はよくこう言った、そして。
アトランタの動物病院に研修に来た時にだった。
一匹の雄のカナダガン、ロミオという彼を見てそこのスタッフ若いアジア系の女性であるキャサリン=ワンに言った。
「もうカナダガンはこの季節だと」
「ええ、本来はね」
キャサリンも答えた。
「巣立つ時よ」
「そうだよな」
「けれどね」
それでもとだ、キャサリンはさらに話した。
「怪我をしていてね」
「それでか」
「ずっと入院しているの」
「そうなんだな」
「けれどやっと完治して」
その怪我がというのだ。
「明日ね」
「退院するんだな」
「そうなるわ」
こうイリヤに話した。
「遂にね」
「それは何よりだな」
「それでね」
キャサリンはここでだった。
イリヤを病院の前に案内した、すると。
そこに一匹のカナダガンがいた、イリヤはそのカナダガンを見てそれですぐに察した。
「ああ、奥さんか」
「ロミオのね」
「それでずっと待ってるんだな」
「ジュリエットっていうの」
「シャークスピアだな」
「それから取ったの」
名前はというのだ。
「だからね」
「それでか」
「そう、ロミオが入院している間ね」
「巣立つ時でもか」
「この娘だけ残って」
そうしてというのだ。
「それでね」
「待ってるんだな」
「旦那さんの退院をね」
「人間以上だな」
イリアは思わずこう言った。
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