第三章
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「人を信じて傍にいてくれて」
「頑張っていますね」
「そうした子です」
こう話した。
「本当にいい子です、ですから私も」
「これからもですね」
「あの子と一緒にいます」
家族としてそうするというのだ。
「そうしていきます」
「そうしてくれますか」
「あんな風になってもですから」
人を信じて生きようとしているからだというのだ。
「それに応えなくてはです」
「いけませんよね」
「はい、そう思いますから」
だからだというのだ。
「私もです」
「応えてです」
そのうえでというのだ。
「一緒にいます」
「では宜しくお願いします」
「それでは」
蓮田の返事は確かなものだった、そして。
彼を診察に勤務している病院に連れて来た時だ、院長はその彼を見てそのうえで確かな顔と声で言った。
「やはり完治はしていなくて」
「目と耳はそのままで」
「歯もだね」
「ないままです、ただ」
「顔の形も戻らないけれど」
「骨折は治って」
粉砕状態のそれはだ。
「それで、です」
「こうして生きていけているね」
「そうです、元気にです」
「暮らしているね」
「この通りです」
「ワン」
見ればだ、ラビは。
院長を見ても尻尾を振った、院長はその彼を見て無意識のうちに優しい顔になってそのえで蓮田に話した。
「本当にいい子だね」
「そうですね」
「前の飼い主はね」
「何でもヤクザ者で」
「うん、江田乃といってね」
「その界隈でも有名だったらしいですね」
「乱暴者でね」
そうした意味でというのだ。
「あの界隈ですら嫌われる」
「とんでもない乱暴者で」
「暴力なんてね」
それこそというのだ。
「日常茶飯事の」
「とんでもない奴だそうですね」
「そしてそれが過ぎてね」
その暴力がというのだ。
「この前チンピラを三人殴り殺して」
「逮捕されましたか」
「それも気に入らないって理由で」
それだけでというのだ。
「そうしたからね」
「本当にとんでもない奴ですね」
「死刑もね」
これもというのだ。
「なるよ」
「三人も殺したら」
「その前にも二人殺しているからね」
「合せて五人ですか」
「もうね」
それこそというのだ。
「今度こそだよ」
「死刑ですね」
「うん、それでこの子は」
あらためてラビを見た。
「そんな人間に酷い目に遭わされたけれど」
「それでもですね」
「人が好きで頑張っているんだ」
「生きようと」
「それなら」
生きようとしているならとだ、院長は言った。
「出来るだけ見捨ててはいけないね」
「そうですね、仕方ない場合はあっても」
「どうしても助からない様な」
「ですがそうでないなら」
「助けないといけない
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