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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦(8)〜タバル・ヒルの戦い(下)〜
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 装甲服を纏っていても予想外の方向からの衝撃には弱い。戦斧は見当違いのところへ突き刺さる。 
「噴っ!」
 腰掛けていた椅子を斧を構える腕に“被せた”
「ハイっ!ハイっ!噴ッ!」
手首を“外された”不運な兵の戦斧は“ぬるり”と丸い男の掌中に移り
「ガフッ!?」
 そのまま奪った相手に“返却”された。

「ウォッ!?」
 愛用の斧を腹から生やした戦友が倒れ伏すのを見て包囲していた者たちが怯む。
「ひるむなぁ!」
 打ちかかるが今度は戦斧の柄を椅子ががっちりと押さえ込み、肘関節を椅子の脚が絡める。
「ウォッ!?」
 巨体が空中でグルリと回る、回りたくないのに関節と装甲の構造で自分もグルリと――
「憤覇ッ!!」
「〜〜ッ!!!」
 天幕を突き破り精兵は吹き飛ばされた。低重力であることを活かした絶技である。
「クッ……クソッ!かかれ!かかれ!」
 だが彼らは即座に薙ぎ倒された。
「旅団長閣下!ここは我らにお任せを!!」
 聖輪武装牧師隊が駆けつけたのだ。
 旅団長が無言で指差す先へ彼らはかけてゆく。
 この時点でエルビング男爵達の撤退により趨勢は決したのである。

 しかしながらそれはあくまで本陣の防衛においての話である。


「閣下」
 幕僚長がかけよる。
「状況は」
 リューネブルクは返り血を浴びながらも冷徹さを保っている。
「主力の後退はほぼ完了しております。前衛陣地の設備は破壊しました、もうまもなく“夜”がきます。連中の塹壕で戦う真似はしたくありませんな、このままでは酷い消耗戦だ」

「重火力隊は?」

「前進し、築城も終えています。またキチジ・パスも敵部隊が後退し、動かせる重火力隊の設置を進めています」
 リューネブルクは満足そうにうなずく。
「よろしい、火力陣地まで下がる。各連隊長に達せ」


「再編を終えたら次は陥落――いや、次はありますかな?」

「敵は馬鹿ではない、あそこで一戦勝利を得た上で捨てたのだ。ここももう捨てるだろうな」

「追撃なさりませんか?」

「この本陣に何を置き土産にするか――」
 左様でしょうな、と幕僚長は頷いた。

 自分の頭が冷えているか確かめたらしい、と分かるとリューネブルクも片頬を釣り上げた。
「こんな星だ、頭は冷えているさ」
 幕僚長は声をあげて笑った。彼は逆亡命者ではなく、オーディンの富豪の生れであり、リューネブルクと異なり諧謔を好む楽天的な男であった。
 

「所詮は地方軍と思っておりましたが」
 だがそういった時には先程までの笑いの残滓は消え去っている。 
 軍人としてはリューネブルクが准将の任に就いて最初の一年は苦労した運営を二年間安定的に補佐し続けた男である。
 たかが七千にも満たない兵
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