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おぢばにおかえり
第六十六話 好き嫌いその一

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                第六十六話  好き嫌い
 阿波野君は次の日も朝から教会に来ました、それで私に言ってきました。
「海に行きませんか?」
「八条町の海?」
「はい、よかったら須磨の方にも」
「いいけれど季節じゃないわよ」
 私は阿波野君に前以て言いました。
「泳ぐにはね」
「いえいえ、景色を観たいですから」
「海のなの」
「はい、それでです」
 相変わらず私にはにこにこしています、どうしてこの笑顔を先輩に向けられないのかと思ってしまいました。
「先輩と一緒に」
「観たいのね」
「駄目ですか?」
「須磨とか行ったことあるわね」
 私は阿波野君に尋ねました。
「そうよね」
「もう何度も」
「それで今回もなのね」
「はい、今回は先輩とです」
 こう私に言ってきました。
「二人でと思いまして」
「私と一緒でなくてもいいでしょ」
 自然とこう思って言いました。
「別に」
「いえ、案内といいますか」
「何度も行ってるのに?」
「それでもです」
「二人でなのね」
「そうしてくれますか?」
「別にいいけれど」 
 ついつい返事に怪訝なものが入りました。
「けれどね」
「けれどっていいますと」
「阿波野君いつもそんなこと言うわね」
 最初に会ってからずっとこんな調子だと思います、よく知っている道でも私にお願いしますと言ってきます。
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