第三章
[8]前話
「若しあの時見付けてもらわなかったら」
「そのワンちゃんに」
「ハナって娘に」
「それでひいお祖母ちゃんに育ててもらえなかったら」
「今のお母さんはいないのね」
「そうなのね」
「叔父さんに家族にしようって言われたし」
このこともあってというのだ。
「若しもよ」
「見付けてもらってなくて」
「育ててもらえなかったら」
「家の娘としてね、だからね」
それでというのだ。
「ハナもひいお祖母ちゃんも今も大好きよ」
「お母さんが子供の頃に亡くなったけれど」
「今も覚えていて」
「それでなの」
「大好きなの」
「そうよ、あんた達もよ」
娘達にも話した。
「若しハナが見付けてくれなくてひいお祖母ちゃんがお母さんを育ててくれなかったらわかるでしょ」
「生まれてなかったかもね」
「今ここにいないかもね」
「お母さんがいないとだし」
「それじゃあね」
「そうなっていたかもね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「二人共ハナとひいお祖母ちゃんに感謝してね」
「私達のことでもあるし」
「余計になのね」
「そうよ、それに血はつながっていないけれど」
それでもというのだ。
「お母さんずっと家族として大事にしてもらってるし」
「私達もね」
「お父さんは叔父さんの従弟だから私達は血がつながってるけれど」
「お母さんも身内と全く同じ扱いだし」
「差別されていないわね」
「そのことに感謝してね、お母さんもあんた達も優しさの中で生きているのよ」
娘達に笑顔で話した、そうしてだった。
弓香は娘達を連れて曾祖母とハナの墓参りに行った、街の外れにある一家の墓には月に一度娘達を連れてそうしているが。
曾祖母の墓と犬の墓は並んでいた、弓香は娘達と共に参ってそうして手を合わせて心から感謝の言葉を述べた。
犬と曾祖母のお陰で 完
2021・8・20
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