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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
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《緋想》が妖刀であり、ある種の護り刀である以上は、こうして先祖代々と継承されてきたのも、そんなに不思議な話ではないかもしれない。それでもやはり、国宝級ではあるのだが。
「ただ、これだけだと、持ち主が平安時代の貴族だっていうことしか分からないのだ……。この刀の銘とかが分かるだけで、かなり違ってくるんだけど──如月くん、知ってるのだ?」
「うん、元々の性質は大刀契っていうものだよ。銘は《緋想》って言うけどね」
彼女はそうした自分の返答を聞くと、大刀契という言葉を、何度か口の中で転がしていた。
「歴代天皇に代々と伝わるもので、確か元来の大刀契が火事で焼けてしまったことがあるのだ。これは護り刀で霊的なものだからっていう理由で、陰陽師の安倍晴明が復元を依頼されてたはず。無事に祭祀も終わって、大刀契は当時の天皇に献上されたのだ。でも、南北朝時代には紛失しちゃって……。もしこれが、安倍晴明が打たせたもう一振りの大刀契で、護り刀として自分の子供に譲ったっていうのなら、合点はいくのだ。そういう資料は、殆ど見当たらないけど……」
神妙な面持ちをして、文は上目気味に自分を見つめる。その事実を認めにくいのだろうか、或いは、自分自身で提唱した説が間違っているのかを、確認し直しているかのようでもあった。
そのうち文は、意を決したように口を開く。「如月くんが、土御門家の嫡流、なのだ……?」
いやはや──と嘆息するしかない。感心から出た溜息を吐きながら、自分は小さく頷いた。
「うん、母方の系譜が土御門家の嫡流なんだ。自分は始祖から数えて38代目だね」
「やっぱり、ですのだ! 安倍晴明が御先祖様なのは凄いのだ!」
「ふふっ、どうもありがとう」
照れ隠しの笑みを零しながら、不意に思った。確かに自分は安倍晴明の嫡流だけれど、隣に座っているアリアもまた、かのシャーロック・ホームズの4代目だ。理子もアルセーヌ・リュパンの嫡流だし、キンジも遠山金四郎の嫡流になるし、目前の文だって、平賀源内の子孫だと言われている。よくよく考えると、この武偵校の2学年というのは、血統としては中々に由緒の正しいお家柄の面々が多いように思えた。こんな偶然があるのだろうか──と、勘繰ってしまうほどには。
今更ながらに、武偵校は末恐ろしいところだね──と胸の内に零す。自分を除いて列挙した子たちは総じて能力が高いし、それはランクと評判が物語っている。何かしらの天才を抱いて生まれてきたであろうことは、容易に首肯できるところだ。しかし同時に、そうした血筋とは無関係の面々が、これまたある種の天才なのか、はたまた努力なのかは分からないが──高ランクの天才と呼ばれていることも、少なくはない。そうした意味でも、武偵校は末恐ろしい場所なのだ。
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