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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
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ん。神崎さんの手を繋ぎながら言われても、あまり説得力はないのだ」
「──っ!?」
予想もしていなかった文の言葉に、離していたはずのアリアの手をまた離さざるを得なかった。反射的に引いた自分の手が視界に入るものの、それがたった今まで彼女の手を握っていたとは到底、思えもしない。純粋な羞恥とはまた異なる感情が横溢しているのを感じながら、隣に立つアリアに問いかける。「……手、ずっと握ってた?」自分でも分かるほどに、声は震えていた。
そうした自分の問いに、彼女は一言も洩らさないまま頷いた。ただ羞恥に当てられたように俯いていて、伏し目にした赤紫色の瞳を足元に彷徨させている。アリアがこうした態度を取るまで、自分のしていたらしい行為を把握できていなかったほどには、どうやら殆ど無意識的に──それがどんな感情から由来したものであるかは置いておいて──彼女の手を繋いでいたようだった。
──何をやっているんだか。胸の内でそう呟くくらいしか、この言葉の処理場は存在しない。
文はそうした自分とアリアの様子を、呆れたように黙視していた。不意に彼女らしからぬ溜息を小さく吐くと、「……取り敢えず、如月くんに依頼されてたものは終わったのだ。お昼休みも残り半分だし、いつも通り、整備に関しての説明とかしたいから……」と苦笑で済ましてくれた。
文なりの場の繕い方が分からない自分とアリアではない。彼女が案内してくれた工房の奥、そこに据え置かれている椅子に揃って腰掛けながら、平静を気取りつつ作業テーブルに視線を遣る。
小綺麗なテーブルの上に置かれていたのは、確かに自分が依頼したものだった。ベレッタM93R、デザートイーグル、《緋想》──とりわけ《緋想》は白布の上に静止させてあった。やはり彼女は、装備科の生徒として相当な知識を持っている。昨日に見せてくれたあの対応も、文の知識の顕著なことを物語っていた。改めて感嘆させられながら、口を開いた彼女の説明を聞く。
「ベレッタM93Rとデザートイーグル、これらは両方とも異常なしだったのだ。重要な反動除去機構も正常に作動してるし、デザートイーグルのバースト機構にも損傷は見られなかったから、今後も長く使ってあげてほしいのだ。あややがパーツを1つずつ丁寧に手入れしたから、使い勝手は少しだけ良くなってるかも、ですのだ! ということで、こちらの銃はお返しして……」
そう得意気に宣言してから、文は銃を手渡してくれた。それを受け取る前に、既にホルスターに入れてあるノンカスタムのベレッタを《境界》で自室に戻してから、改めて整備をしてもらったベレッタとデザートイーグルとを仕舞う。やはり自分には、慣れたこの重量が落ち着くものだ。
胸の内で人知れず安堵しながら、いざ本題に入ろうとしている文に向けて、無言で先を促す。
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