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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
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、途端に晴れていくように感じた。雲間から射した陽光を幻視した、或いは本当に自分の身に陽光が射しているような──目を瞑れば微睡んでしまいそうな、そんな温和な光をアリアから感受する。綻んだ目元が、やはり彼女にお似合いだった。
「ふふっ、それは内緒」
端々にどこか悪戯心の見え隠れするような笑みに、アリアは人差し指を唇に当てて蓋をした。その隠し事をする姿が、彼女の風貌と相まって、無邪気な子供のようで愛らしくて──これならば、歳頃の少女が見せてくれた隠し事の1つや2つ、どうだっていいだろうと思えてしまった。
「女の子には、言えない秘密の1つや2つ、あるんだから。アタシだって女の子だもん」
「そっか」と彼女の悪戯めいた笑みにつられて自分も笑う。「じゃあ、詮索はしないよ」
アリアは満足そうに頷くと、やにわに自分の右半身背後に回った。そうして右手首を、その華奢な手で掴んでくる。彼女の手は温柔で、肌理細かで、自分から握った時と変わっていなかった。
「男の子にしては、ちょっと細いのね」からかうように目を細めながら、アリアはそのまま右腕を上げる。それに連動して、自分の右腕も持ち上がった。虚空に手をかざすような形で──。
「……そっか、なるほど」
「気が付くの、ちょっと遅くない?」
ここで初めて自分は理解できた。傍らで頬を膨らませている彼女が見せた、ある種の遊び心を。
「パートナーなら、アタシのこと分かっててくれると思ったのに。ちょっと残念かもね?」
悪戯的な口調に眦を下げながら、アリアは赤紫色の瞳を上目にして見つめてくる。とてもご機嫌そうで、『アリアは悪くないよ』と言ったのが、それだけ嬉しかったのだろうと類推した。
「あはは……。流石にパートナーでも、突飛なことをされたら分からないよ」
そう苦笑してから、眼前の虚空と相対する。アリアが握ってくれた手首から掌へと力を込めて、大気を撫でるように軽くかざした。それに呼応するようにして現れた《境界》は、この空間の一部だけを鋭利な刃物で切り取って、別の風景を糊付けして貼り付けたようにしか見えない。例えば装備科棟にある文の工房、そこへと続く紡錘が、この廊下に突如として現れたというように。
「行こう」
「うん」
顔を見合わせながら、たったそれぎりの会話を済ませた。御機嫌とも御満悦とも見てとれるアリアの面持ちを隣にして、この子は諧謔めいたこともするんだな──と内心で新鮮味を覚える。彼女にとっては諧謔というよりも、歳頃に相応な、馴れ合いみたいなものかもしれないけれど。
そう微笑ましく思いながら、自分の口元が緩んでいるのを自覚した。それをアリアに気取られないようにしつつ、掲げた右腕を下ろす。そのまま彼女の手を取って、雑多な工房に足を
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