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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
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強襲科顧問の蘭豹、武偵校では彼女はそう通っている。香港マフィア・貴蘭曾(グランフィ)というところの会長の愛娘らしく、聞くところによれば、香港では無敗の武偵として恐れられていたようだ。しかし気性の荒い性格を咎められ、遂には香港を出禁になったらしく、各地の武偵校で問題を起こしては転勤を繰り返しているのだとか。今はここに落ち着いている。


「取り敢えず、これ見いや」


彼女は手短に告げると、手元に置いてあったファイルから2枚の用紙を取り出した。それを自分たち2人に手渡しながら、「まぁ、話だけでも聞いてくれれば構へんで」と苦笑する。
その用紙の表題には、『強襲科:アドシアード出場推薦生徒 ガンシューティング部門』と書かれていた。その下に長ったらしく書き並べてある内容も、おおかた表題の通りになっている。


「《魔剣》の件で、遠山キンジが星伽白雪の護衛をすることになったんやってな。綴梅子から教務科に話は回っとる。遠山といつも一緒に居るんやから、どうせお前たちもやっとるんやろ? ……まぁ、そりゃそうか。教務科の過保護っちゅうのが現状やけど、星伽に悪影響が出てる以上は、護衛が無いよりかはマシやろ。引き続き宜しく頼むわ。改めて教務科からのお願いや」


「んで」と彼女は続ける。用紙を人差し指で指差しながら、内容の説明を始めた。「アドシアード出場者の一部には、顧問や校長から生徒に直々の推薦があるんや。高ランクの成績優秀者は勿論、それ以外でも、独自に才能を見込まれた生徒なんかも多い。お前たちはウチの推薦と校長の推薦とで対象になったんやが、これは大いに名誉なことや。本来ならば出場すべきやけど……」


蘭豹はそこまで言うと、分かりやすく語調を下げる。


「星伽の護衛がある以上、アドシアード出場は危険やろ。3人で護衛するにしても、うち2人が抜けるっちゅうのは、遠山にしても負担がかかるもんなぁ……。だから今まで黙っといたんやが、取り敢えず訊くだけ訊くわ。お前たち2人はアドシアードに出場するんか? しないんか?」


彼女が自分たちを呼び出した挙句に、『話だけでも聞いてくれれば構へんで』と言ったのには、どうやらこうした意図があったかららしい。既に答えを決めていた2人の意向と蘭豹の予想とに、そこには微塵の差異こそ無いものの、それでも拒否を伝えるというのは些かはばかられた。
僅かの決意を間に置いて、「この状況を鑑みると──」と切り出した矢庭に、鼻腔には葉巻らしき独特の臭いが漂流してくる。自分たち2人の首元に回された腕からは、黒革の匂いもした。


「まぁ、出るわけないよなぁー。……だろ?」


指に摘んでいる葉巻から朦朦と立つ紫煙なぞは厭わず、声の主──尋問科の綴梅子は、咽喉を鳴らしながら自分たち2人を見て笑った。彼女
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