第2話 模擬戦闘(前編)
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だ。
「質問に答えて下さい。何故貴方は動いたのですか?」
鼻先が触れそうになるほどの至近距離。しかし、そこにあるのは殺意と憤怒の感情と僅かな興味。
「勝手な行動は謹んで下さいと私は言いました。二度同じ事を言うつもりは無いですし、警告の意を込めてお伝えしました。しかし、貴方は人間などという脆弱な下等生物の為に動き、アインズ様の御身を危険に晒したーーーそうなると分かっていて、貴方は何故それでも動けたのですか?」
「......ナザリックにとってモモンガさんの立ち位置は把握している。勿論、俺が勝手に動けばモモンガさんにも迷惑を掛ける事になることも分かっていたよ」
エントマがナバナの頭を掴む力を強める。
「俺はね、エントマ。人間を下等生物だとは思わない。命に貴賎は無い。価値は等しく皆平等だと思っている。助けたいと思えば、俺はまた同じ事をするよ」
「そうですかーーーでは、貴方は人間と我々が敵対した場合、人間側に着く可能性が僅かでもある、ということですね?」
エントマの僅かな興味が失意に変わり、そして殺意を剥き出して頭に掛ける力を込めた。
「貴方を殺せば、アインズ様や......ナザリックの脅威を一つ潰せるのでしょうか?」
「......君の思うようにすればいい」
「ーーー」
ゆっくりとエントマはナバナの頭から手を引いていく。
「アインズ様や私の目が届かない所で、勝手をやって下さい。二度は言いません」
馬乗りの状態から立ち上がり、エントマは静かに部屋を出た。
「(何故、私は殺す事が出来なかった?)」
部屋の外で待機しながら、エントマはずっと考え続けていた。
ナバナはナザリックを攻略した外敵だ。
戦闘メイド部隊【プレアデス】はナバナと実際に戦った訳では無いが、それでも各階層守護者同様に怒りや憎しみが無い訳ではない。
ナバナはモモンガ様とは異なり、よく眠る。
眠っている間は無防備だ。いつでも攻撃できる。
だが、安らかな寝顔を眺めていると不思議と殺意を抱く事はない。
さっきもそうだ。殺すには絶好のタイミングだった。少し力を込めれば頭を潰せていたかもしれない。
でも潰せなかった。殺せなかった。
何故ーーー?
「ーーーそうか」
ナザリックにおいて、死はこれ以上の苦しみを受けることの無い慈悲である。
「簡単に殺してはダメ......。慈悲を私の手で与えるわけにはいかない、ということ......なのかな」
どちらにせよ、異業種であるナバナはその姿・能力では人間と共存はできない。助けても石を投げられて拒絶される事となるだろう。
所詮、偽善だ。虫らしく、疲弊して弱りきった時に殺してやろう。失意や絶望の中で殺した方がきっと楽しい。そうに違いないーーーと、エントマは結論付けて、思考を整理した。
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