第2話 模擬戦闘(前編)
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込む。衝撃で大きく蹴り飛ばされた絋汰に更に追い討ちをかけるよう、戒斗は距離を詰める。
「超えさせない!超えちゃならない!戒斗、それがお前にとっての俺だ!」
絋汰は白銀の甲冑を纏う姿に変身して、その剣を受け止めた。
「葛葉ァ!」
「戒斗ォ!」
お互いの巨大な剣が音速を超えて交錯する。
剣が振われるだけで地面は割れ、周辺の空気にも衝撃が走る。
「俺は......お前なら禁断の果実を託しても良いと、そう思っていた!」
「......」
無言のまま、戒斗は蹴りを放つ。その蹴りが絋汰の持つ剣を弾き飛ばし、そのまま流れる様に剣の斬撃と蹴りの連続技を絋汰に叩き込んだ。
「今のお前に、禁断の果実は渡せない!渡しちゃいけない!」
「お前はいつまで上から目線でいるつもりだ?」
「なんだと!?」
「託しても良い、渡せない......お前は俺より上に立っているつもりか?俺はそんなお前の態度も気に入らなかった!」
絋汰は仮面の下で目を見開いた。
怪物の姿となった戒斗の口からそんな言葉が出るとは思っていなかったからだ。
「どうした?もう後は無いぞ!」
二人の苛烈な戦いは速度と威力を増していく。
だが、そんな戦いにも終わりが訪れる。
絋汰は防ぎきれず、左肩から胸に掛けてモロに斬撃を受けてしまう。
「これで......終わりだ!葛葉ァ!」
肩から血が吹き出す絋汰に切先を突き立てて戒斗は剣を振り下ろした。
「それでも......俺は!」
絋汰は持てる力すべてでその剣を右肩と右腕で受け止めて剣先をへし折り、戒斗の胸部に折れた剣先を突き刺した。
突き刺してさらに、体重を乗せた拳を叩き込み、折れた剣先が戒斗の胸部を貫通した。
戦いは絋汰の勝利に終わった。
怪物の姿から人間の姿になった戒斗を、同じく変身を解いた絋汰が胸で抱き締める。
お互い満身創痍で絋汰も重症だった。
「ーーー何故だ?何がお前をそこまで......」
「『守りたい』という祈り、『見捨てない』という誓いーーーそれが俺だ!俺のすべてだ」
戒斗を抱き締めながら、絋汰は悲しみの涙を流した。
「ーーー何故泣く?」
痛みで泣いている訳では無い事は戒斗にも分かっていた。
絋汰の顔が悲痛に歪んでいるのを見て、何を感じているのか分かったからだ。
「泣いていいんだ......それが俺の、弱さだとしてもーーー拒まない!俺は泣きながらでも前に進む!」
頭からも血を流し、涙と鼻水で顔を歪ませ、嗚咽を溢すその姿は、駆紋戒斗の中の勝者の姿とはとても程遠い。
だが、こんな男に負けたのかという悔しさや恨みはない。
勝った者が泣き、負けた者が笑っていると言うのもある意味、悪くないのかも知れない。
「ーーーお前は、本当に強い」
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