第十七話 冬の入り口その五
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「千春は今回はグラマーばっちりだからね」
「教えてくれる?」
「そうするよ」
にこりとしてだ。千春は希望にこう提案したのだ。
「それでいいよね」
「うん、それじゃあね」
「それで千春はね」
「千春ちゃんはどの教科が自信ないのかな」
「古典がなの」
少し困った顔になったうえでだ。千春は答えた。
「今源氏物語やってるけれど」
「あれ文章に癖あるからね」
「だから。ちょっとね」
「苦手なんだ」
「そうなの。希望源氏物語はどうなの?」
「あっ、源氏物語ならね」
どうかとだ。希望は笑顔で千春に答えた。
「僕かなり勉強したからね」
「大丈夫なの?」
「うん、大丈夫だよ」
これが希望の返答だった。確かな顔での。
「じゃあ古典は僕がね」
「教えてくれるのね」
「うん、そうするからね」
にこりと笑ってだ。希望は千春に言ってだ。このテストでもだ。
二人は期末テストの勉強を学校の図書館の一つでした。二人用の席に向かい合って座った。そしてそのうえでそれぞれの教科書とノートを開いてだ。
まずはだ。希望が言った。
「グラマー、今回は文法がね」
「そんなにわかりにくい?」
「何ていうか。疑問文がね」
それがだ。どうかというのだ。
「何かよくわからなくて」
「あっ、それならね」
千春は希望の言葉に応えてだ。すぐにだった。
身体を前に乗り出してだ。そのうえで希望にだ。
その文章のところ、教科にあるそこをだ。自分のペンで指し示しながら言った。
「ここはね。こうでね」
「あっ、そうするんだ」
「ここが大事なのよ」
「そこをちゃんと覚えたらいいんだ」
「うん、そうなの」
ペンで指し示し続けながらだ。希望に説明していく。
「そうしたら楽だよ」
「そうだったんだ」
「そうなの。これでわかった?」
「うん、何かそう言われると」
「簡単よね」
「もっと難しいかって思ったけれど」
「覚えたら楽なの、ここはね」
そうした部分だというのだ。
「じゃあこれでね」
「テストも大丈夫かな」
「そう思うよ。それでね」
希望にその文章の説明をしてからだ。今度はだった。
千春は身体を席に戻してからだ。こう言ったのだった。
「千春だけれど」
「源氏物語だね」
「わかりにくいの」
本棚が連なるその図書館を背景にしてだ。千春は希望に話した。
「この教科書の範囲もね」
「そこ序文だけれど」
「はじまりの?」
「うん、そうだけれど」
「凄くわかりにくいんだ」
「どうしてもね」
困った顔でだ。千春は希望に話す。
「ええと。作者が紫式部で」
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