第十七話 裏側のことその八
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「だからそうしたこともな」
「気をつけることね」
「そうだ、幸せと不幸せはちょっとした違いでな」
「分かれるのね」
「それも世の中なんだ」
こう娘に話した、そしてだった。
父はここでだ、こうも言った。
「父さんもな、本当に転勤になりそうだしな」
「やっぱり埼玉嫌なのね」
「ああ」
今回も真顔で言った。
「やっぱりな」
「そうなのね」
「埼玉はな」
どうしてもというのだ。
「やっぱりな」
「本当に嫌なのね」
「馴染みがないからな」
それ故にというのだ。
「やっぱりな」
「そんなに駄目?埼玉って」
咲はどうかという顔で言った。
「別に北朝鮮じゃないでしょ」
「あの国はな」
流石にとだ、父も答えた。
「流石にな」
「問題外よね」
「日本じゃないだろ」
そもそもというのだ。
「大体」
「それはね」
咲も否定しなかった。
「極端な例としてね」
「出したな」
「ええ、けれど行きたくないわよね」
「誰が行きたいんだ」
こう娘に返した。
「一体」
「そうでしょ」
「あそこに行くならな」
「埼玉の方がよね」
「比べられるか」
こう咲に返した。
「幾ら何でもね」
「食べものないしね」
「しかも言論の自由なんてないぞ」
「ちょっとしたことで」
「死ぬぞ」
文字通りにというのだ。
「将軍様の粛清とかでな」
「もう気分次第で」
「実際にあそこ行った人で生きて帰るなんてな」
それこそというのだ。
「出来るか」
「不可能よね」
「イリュージョンより難しいぞ」
こうも言うのだった。
「それこそな」
「じゃあ埼玉ね」
「行く」
返事は一言だった。
「というかあそこに転勤とかな」
「八条石油あそこに進出してないわね」
「グループ自体でな」
「そうよね」
「一応共産主義だからな」
「一応ね」
「何処が共産主義かな」
それこそというのだ。
「わからないからな」
「お父さんにしても」
「封建主義にしかな」
「見えないから」
「一応な」
「あっちはそう言ってるわね」
「ああ、けれどな」
事象はそうだがというのだ。
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