第三百二十五話 総帥さんのお言葉その三
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「それでもだよ」
「あの人はですね」
「かなり強かったそうだよ」
「その腕を見せなかっただけで」
「人を斬る剣術は備えていなかったんだろうね」
「活人剣ですが」
「そう考えていたかも知れないよ、そして畑中さんも」
その畑中さんを見てのお言葉だ。
「相当にね」
「お強くて」
「今もだよ」
「ああしてですね」
「存分にね」
まさにというのだ。
「身体を動かせるんだよ」
「毎日の鍛錬の賜物ですね」
「そう、ただね」
「ただ?」
「あそこまでなれることは」
このことはというと。
「まずね」
「無理ですか」
「毎日だよ」
「あれだけの鍛錬をされているから」
「出来ることでね、それに」
総帥さんはさらにお話してくれた。
「もう一つあるよ」
「もう一つ?」
「そう、食べることもね」
「そういえば」
僕も言われてはっとなった。
「畑中さんお食事も」
「かなりだね」
「召し上がられています」
九十過ぎの人にはとても思えない位だ。
「僕達と同じ位はです」
「食べているね」
「運動してですね」
「しっかり食べているから」
「ああしてですね」
「動けるんだよ」
「そういうことですね」
「僕もああなりたくて」
畑中さんの様にというのだ。
「励んでいたけれどね、無理だったよ」
「そうですか」
「うん、敵わないよ」
僕に笑って話してくれた。
「とてもね」
「やっぱり十一キロの木刀ですね」
「それを毎日千回二千回も振ることは」
「そうそう出来なくて」
「それを毎日して」
「しっかり食べているからこそ」
「出来るんだよ、勝海舟さんもだよ」
この人もというのだ。
「そこまではね」
「出来ませんでしたか」
「九十まで生きていないし」
日清戦争の頃まで生きていた、ただ日露戦争の頃には、だった。
「それでだよ」
「畑中さんみたいには」
「流石にね」
「そうでしたね」
「毎日そうした鍛錬をしていたか」
勝海舟さんもというのだ。
「流石にね」
「していませんでしたか」
「そうだったと思うよ」
「ですが畑中さんは」
「もう戦争が終わって復員してからだよ」
優に七十年以上の間のことだ。
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