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私の中に猫がいる 完結
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 その日は、お母さんが商店街の人達と、一泊旅行に出掛けると言って、帰らないのだった。私、近くの駅まで帰って来たのだけど、ふと、魔がさしたのか、この春オープンした小さなビストロ美浜に入った。前から、オープンしたのは知っていたし、お店の名前も気にはなっていたのだけど、ひとりで入る勇気なかったのだ。だから、お父さんにここに居るよって、連絡はしておいたのだ。

 今日は、プチが一緒じゃぁ無いのだけど、思い切って、重い木の扉を開けた。中はカウンターの前に椅子が並んで、二人掛けのテーブル席が二つ。お客は、女の子の二人連れが一組、カウンター席に座っていた。中には、オーナーらしき人が独りだけで、キャスケットをかぶって、若い人だった。

 私は、女の子達とは反対側の方に座った。

「いらっしゃいませ お久しぶりです」と、オーナーが声を掛けてきて、コースターを用意してきた。

「えぇー お会いしたことあります?」と私は返したが、何にも答えず、メニューを出してきた。

「お肉は三田牛を仕入れています。魚介は明石のものが多いですね」

「じゃぁ このランプ肉のわさびソースとサラダのごまソースで」

「かしこまりました お飲み物はいかが」

「グラスワインがありましたら・・」

「僕のお勧めは シュワルツ カッツです。甘めなんですが、おいしいです。高くないので・・そのあとに、苦めのビールでどうですか」

「じゃぁ お勧めで、お願いします。どこかで・・お会いして・・」続けようとしたが、又、無視された。

 向こうの席の女の子達が、オーナーの手が空くと、呼び寄せて、話掛けている。どうやら、成人式の時の同窓会から5年になるので、又、同窓会を計画しているらしい。近くの高校の卒業らしく、私は、面識がない。だから、オーナーとも会ったことがないはずなんだけど・・。

 私は、シラスとチーズを和えた突き出しと、サラダでワインを飲んでいたんだけど、お肉を料理し始めてくれていた。厚い鉄のスノコ状になったもので焼いてくれているみたい。お肉の焼ける匂いがしてきた。私は、この匂いが好きなんだ。

 白いお皿にお肉を切って、ソースをかけて、焼いたトマトと椎茸が添えてあった。お皿を出してくれた時に

「ビールは如何ですか」と、聞かれたので、小さな声で「お願いします」と言った。

「おいしい」と、一口食べて言うと、向こうで、オーナーは微笑みながら頭を下げていた。この時、なんかを感じてしまった。

 お父さんが、お店に入ってきた時に、女の子達は出て行った。

「よく、独りで入れたな いい店だろう」と、お父さんは隣に座ってきた。

「えぇ とっても、お料理おいしいの」

 その時、オーナーがおしぼりを出しながら

「いらっしゃいませ 左近様
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