暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission3 テミス
(3) マンションフレール302号室A
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
る」
「……そういうわけじゃないし、考えてようやく出てくるような理由ならいらない」

 逸らされた顔はすでに真顔に戻っていた。

「今から街道に出るのは危ない。夜になって魔物も活発になるだろう。だから出稼ぎは明日からでいいか。――エルはうちに泊まるとして、ジュードは」
「便乗させてもらえると嬉しいなー、なんて。僕、ヘリオボーグ研究所の職員宿舎に住んでるんだけど、帰りのお金なくて……」

 先ほどはジュードの親和力に驚いたが、今度はルドガーの適応力に驚かされる。
 ここにいる全員が昨日おとといにルドガーと知り合ったばかりなのに、ルドガーはユティたちと同道し、宿を供することさえ自然体で行っている。

(濃やかで情に篤く、しかし情に流されはしない。アルおじさまの人物評通り)

「じゃあジュードも泊まりな。ユティはどうする」
「泊まりたい。ユティの実家、山奥、遠い」
「はいはい。じゃあとりあえず店閉まる前に買い出し行ってくる。みんな着替えやら何やら要るだろうからな。あとは飯の材料」
「エルも行くっ」
「いいけど迷子になるなよ。ルル、留守番頼む」
「ナァ〜!」
「あとユティ。部屋の中勝手に撮るなよ」
「……ちぇ」
「撮・る・な・よ?」
「イエス、サー」



 ルドガーとエルが買い出しから帰ってきてからは、特に盛り上がりもせず、シャワーから着替え、就寝まで、面白いイベントも起きなかった。

 どんな言葉も、口にすることで現実がさらに悪化しそうで、誰も言えなかったのだ。


[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ