暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission3 テミス
(3) マンションフレール302号室A
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 ルドガーの承諾を受け、ヴェルが手帳を開いてユリウスの情報を開示する。
 ヘリオボーグ研究所のバランとの交流。マクスバードで『ユリウス』を探す人物。

(バラン…懐かしい名前。バランおじさま、今頃何して…)

 考えて、ユティは自嘲した。

(何して、も何も、ユティの世界はユティが時歪の因子(タイムファクター)を壊して消滅させてしまったばかりじゃない。バランおじさまだけじゃない、アルおじさまも、かーさまも、みんなユティの槍で死んだ)

「ユティ? さっきから何かヘンだよ」
「ナァ〜?」

 エルとルルが眉根を寄せてユティを見上げる。この混雑した現状にあって、たった8歳の少女が他人を気遣えるというのは稀有な精神性だ。

(おじさま方に話に聞くだけだと、大人たちに守られる薄羽の蝶ってイメージだったけど、とんでもない。エルは最初から立派な胡蝶だわ)

「気にしないで。一時的なエラーだから」
「さっきも言ってたね。えらーって何?」
「ワタシは失態って意味で使ってる。ちなみに失態は、間違えたとかミスしたとかいう意味」

 さらに分からなくなったのかエルは腕組みで「?」を浮かべる。これ以上は答えないでおいた。




「とりあえず、マクスバードとヘリオボーグに行ってみろってことだね」

 総括したジュードに頭を向ける。

 ビズリーとヴェル、イバルはすでに退室した後だった。置き土産とばかりに壁に粗悪な似顔絵の手配書が貼ってある。――撮る気は起きなかった。

「またお金ないとダメかも……」
「そうだね。またクエスト斡旋所に行って、4人分稼ごうか」
「ジュードも来てくれるのか?」
「ここまで来たら乗りかかった船だよ。最後まで手伝わせてほしいな。迷惑?」
「まさか! ジュードがいるなら大船に乗った気分だ。でもいいのか? 仕事とか…それに、俺と一緒にいると、犯罪者の身内に見られるかもしれない」
「だとしても、ユリウスさんが犯人じゃないことを僕らは知ってるんだ。それにルドガー自身が悪いことしたわけじゃないでしょ。こういうのは堂々としてるのが一番だよ」
「やけに実感のある言葉…」
「…僕も1年前に似たような経験したもんで…」

 ユティの世界には、「ジュード・マティス博士はインターン中にリーゼ・マクシア全土で指名手配を受けた」という都市伝説があったが、事実だったのか。

「ユティは? 来るの?」
「言うまでもなく手伝うに決まってる」

 エルの問いかけに、ユティはそこそこ膨らんだ胸を張った。

「……兄さんに頼まれてるからか」
「うん」

 ルドガーは渋面を作った。明らかにユティの同行を厭っている。

「それが理由だと、ルドガーはそばにいさせてくれない? なら別の理由を考え
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