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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
予期せぬ事態
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ジ。主に君が白雪を護衛しているのは、彼女を《魔剣》から守るためでしょう。そんな最中に、キンジを名乗る者から白雪に向けて、虚偽の電話が掛けられた──おかしいと思わない? イタズラ電話にしては、少し手が込んでいるよね。何も《魔剣》との接触は、互いに対峙し合うことだけじゃないんだよ。彼の者との接触が最も危惧されているのは、アドシアードの当日だけど、必ずしも当日に接触してくるとは限らない。今回が、それだと仮定するならば──?」
そこまで告げたところで、ようやく2人は、事実として起きた予期せぬ事態──ここまでの話を前提に裏を返せば、自分の提起した仮定の1つという可能性──を目の当たりにしたようだった。同時にそれは、この状況と時期を鑑みれば、多分に説得力を孕んでいるものに相違なかった。だからこそ、キンジも白雪も顔を見合わせて、寒慄したような面持ちで押し黙っている。
不意に「これが、《魔剣》の隠密接触なら──」とアリアが重い口を開いた。「今まで以上に用心しないと、やられるかも。たぶん、アタシたちの行動を事前に偵察してるんじゃない?」
そう言いながら、アリアはこちらに流し目をする。その意図を汲んだ自分は《境界》越しに手を伸ばして、まだ閉めていなかったリビングの窓硝子──それをカーテンで素早く覆った。
「ところで」と前置きをしてから、白雪に問いかける。「君が電話で聴いたキンジの声は、いつも通りの声をしてた? そもそも、掛かってきた番号とか覚えてる? キンジのはずはないよね」
その問いかけに、彼女はいささか悩ましいような顔付きで、十数秒ほど考え込んでいた。それから、手元に仕舞っていたらしい携帯電話を取り出すと、着信履歴を見てから小さく呟く。
「あれ、非通知だ……。てっきり皆のうちの誰かだと思ってたんだけど、全く違うね。でも声はキンちゃんに似てたよ? 声が響いてたから、本当にお風呂に入ってるんだって思ったもん」
「偽物のキンジが、白雪に、本物のキンジのところへ行け──と要請すること自体、そもそも意図が掴めないよね。声を反響させる環境まで用意しているあたり、割と周到だけれども」
「どちらにしろ、単なるイタズラ電話には思えないよね」そう続ける。「やっぱり、《魔剣》が接触してきたと考える方が間違いないと思うんだ。何より厄介なのは、《魔剣》はもう、自分たちのすぐ近くにいるだろう──と読めてしまうこと。少なくとも、今の動向は把握されてる。ご丁寧にキンジが入浴した折を狙っているんだから、これを偶然とは捉えられないでしょう?」
そうであるならば、《魔剣》は何によって自分たちを偵察しているのだろうか──真っ先に思い付くのは、盗聴器だった。けれど、その予想も、一瞬間の後には自分自身が否定してしまう。
盗聴器は《武偵殺し》が工作活動に用い
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