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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
予期せぬ事態
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しまうほどには、あっけらかんと。
「ねぇ」と呼びかけると、アリアは夢見心地から醒めたかのように瞠目した。そのまま切れ長の目つきに覗かせた赤紫色の瞳を自分に向けると、少し間を置いて「……なに?」と返事する。
こうした彼女の口調からは、平生と比較して何らの差異の切片をも抱くことはなかった。
「……帰ってきてから、あまり喋らないね。どこか具合でも悪い?」
「別に、どこも悪くない」
「それじゃあ、何か嫌なことでもあった?」
「……何も無いけど。なんで?」
そう返事したアリアの声色は、本当に不思議がっているようだった。
「帰ってきてからずっと、物思いに耽けっているみたいだったから」
その答えが図星だったのだろうか、彼女はほんの少しだけ唖然としたような面持ちになった。それから体裁が悪いと言うかのように自分から視線を逸らすと、苦笑しながら「ごめん」と告ぐ。
「何について考えてたの?」そう問いかけた。やにわにアリアは「えっと……」と言い淀むと、そのまま再度、黙考の深海に沈んでいくらしい。「言い難いことだったら、言わなくても──」
「……彩斗はさ」
アリアは言葉の端を遮って、そう零した。同時にその態度が、いかに平生と比較して彼女にとって似つかわしくないかを自分自身で首肯するのにも、大した時間は要らなかった。
頑なで気位が高い──それがアリアという少女の性格であっても、こうした場面に於いては、人の話を最後まで聞かないような子ではない、と自分は思っている。だからこそ対峙した、物珍しい一種の例外に耳を傾けるべく、細細とした調子とは真逆の赤紫色の瞳を凝視すべくした。
「……どうしてアタシなんかを、こんなに優しくしてくれるの? 彩斗は『そんなこと』って思うかもしれないけど、アタシには分からなくって、だから、それだけをずーっと考えてたんだよ」
詰まった咽喉の奥からようやく洩れたような、そんな声をアリアはしていた。
物思いに耽ける少女が零した問い──らしい問いに、自分は胸の内のどこかで安堵したように思う。それが、彼女のしてくれた告白に起因するのだろうことは、何となく分かっていた。
「大事に思っていない子に対して、とりわけ優しくしたりはしないでしょ。そういうことだよ。自分にとって君はパートナーだし、身内だから。それに、思うように母親に会えないというのが、どれだけ辛いか──だから、せめて自分といる間は、出来るだけ苦の少ないようにしてやりたいんだ。それが、君の言う優しさなんだろうね。……大事に思っていれば、そうもなるよ」
照れ隠しの笑みに濁しながら、最後の言葉を自分は零した。けれども、今更の言葉ではない。自然に口を衝いて出た、自分でも意図していなかった言葉の集積
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