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吸血鬼は永遠に
救出
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ンドンッ!

リーダーの額に銃弾がめり込む。そのままリーダーは後ろに倒れた。
「野郎!」
三人がコートの男に向かって引き金を引こうとしたが、コートの男の方が早かった。発砲音と共に三人の体に弾丸が突き刺さる。三人は呻いてその場に崩れ落ちた。コートの男はゆっくり三人に近付くと、空になった弾倉を新しい弾倉に入れ替え、床をのたうち回る三人の頭に止めを刺した。コートの男は乱れた金髪を左手で撫で付けると、部屋へ足を踏み入れた。

「伯爵!」
ローラが叫ぶ。そう、コートの男はグレイ伯だった。
「無事かね?」
「え、ええ……。でもどうしてここに? いえ、銃弾が当たったのに何故?」
「ああ、これか」
伯爵は銃痕を眺めると静かに目を閉じた。大きく息を吸いこんで止めると、身体中の筋肉に力を入れる。

コン!

伯爵の体から弾丸が押し出されて床に転がった。弾丸は次々に体から排出されていく。
「……貴方は一体何者なの?」
呆気にとられたローラが掠れる声で訊いた。
「その質問に答える前に、先ずはここから脱出すべきではないかね?」
伯爵はそう言うとローラの拘束を解いた。
「立てるか?」
「ええ。大丈夫よ」
ローラはヨロヨロと立ち上がった。
「では行こうか」
「えっ?」
伯爵はローラをフワリと抱き締める。驚いたローラが思わず体を硬直させた瞬間、二人の体は中に浮き、凄まじいスピードで部屋をすり抜けビルの外へ出た。

 外は既に日が落ちて、街には灯りが灯っていたが、そんな様子を確認する間も無く、二人は高速で空を飛んでゆく。他の人間には二人の姿は見えていない様であった。伯爵の腕の中で、ローラは一抹の安堵と共に、言い知れぬ恐怖に包まれていた。彼は明らかに人間では無い。では何なのか? あれこれ想像する事は出来るが、そのどれも現実感が無かった。もっとも、こんな風に空を飛んでいるという事自体がまるで夢の中の出来事の様だったが。街を越え、畑を越え、二人はみるみる伯爵の館へと近付いて行く。深い紺色の夜空に銀色の星が輝き、明るい満月が煌々と辺りに妖しい光を放っていた。

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