誘惑
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イマスク。それが、紗夜の顔を闇色に彩った。
「さあ……見える……見えるぞ……! 君の心の闇が……」
「やめて……ッ!」
紗夜の叫びもむなしく、アイマスクが光る。すると、紗夜の視界は、どんどん黒い世界へ沈んでいった。
そして、その視界には、幼い自分の姿が現れる。
「これは……」
その日。紗夜は、よりよい成績を取るために、一生懸命勉強していた。
だが、必死に頑張っていた紗夜よりも、全く勉強していない日菜が優秀だった。
初めて、自信をもっていい絵を描いた。
紗夜の絵を見て、同じように絵を描いた日菜が、大賞を取った。
中学の時、同級生の男子から告白された。
紗夜の家に来た時、彼は日菜と仲良くなり、いつしか紗夜とは疎遠になった。
受験の時、紗夜は血のにじむような努力を積み重ねて、見滝原高校へ入学した。
日菜はあっさりと、紗夜の上の進学校へ入って見せた。
より音楽の高みを目指したいと思い、必死にギターに打ち込んだ。
つられてギターを始めた日菜だけが、今やアイドルとして成功している。
「やめて……!」
すでに周囲の景色は群青色の闇の中。
頭を抱えてしゃがみ込んだ紗夜へ、霧崎が語り掛ける。
「可哀想に……君は言ってしまえば、妹の下位互換じゃないか……どうして君だけがこうなってしまったんだろうね」
「分からない……自分でも分からないのよ……!」
声が震える。
これまで日菜に抱えていたものが、なぜか霧崎相手では歯止めが利かなくなっていく。
そんな紗夜の耳元で、霧崎の唇が動く。
「ならば、これからは私が君の味方だ」
霧崎は、紗夜の右手首を撫でまわす。包帯が外れたそこにあるのは、謎の紋様___可奈美から聞いた、令呪と呼ばれるもの。すると、不気味に刻まれた紋章がどんどん変形していく。十字に組まれた、拘束具のような紋章に。
それは、霧崎を意味するもの。
「君の望みが叶うように、私が手を貸してあげよう」
「それは……」
「嫌なのだろう? 妹が、君を追いかけてくるのが。嫌いなのだろう? 全てにおいて劣っている自分が」
紗夜は、首を振る。だが、霧崎は続ける。
「君の願いのために、聖杯なんて必要ない……私の言う通りにすれば、君の願いは全て叶う」
「私の願い……日菜を……」
徐々に紗夜の目から光が消えていく。
「見返してやろうじゃないか……この闇が、この力が………私が、君の相棒だ」
彼の言葉に、紗夜は周囲を見渡す。
これまでの日常では想像することさえなかった、無限の闇。
それを見る紗夜は、すぐそばの霧崎の顔さえ見えなくなっていた。
ただ、彼が自身の頬に触れるのを肌
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