誘惑
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いていた。あまりに合理的すぎる判断に、スイムスイムの殺意が感じられなかった。
スイムスイムのナイフが空振りしたところを、ハルトはウィザーソードガンで狙撃。だが、それはスイムスイムの潜水によってかわされてしまった。
「このままじゃ分が悪い……かといって、紗夜さんを放すわけにもいかないか……」
「私に……」
紗夜は、白いアイテムを見下ろした。
日本刀を模したそれ。ココアから借りたそれを、じっと見つめる。
「私が、これを使いこなせれば……」
「それは?」
「保登さんから借りました。あの人型に変身するためのものだそうです」
「……!」
本当に、あのヒューマノイドの正体はココアなのか。
そんな顔をハルトがしているのは容易に想像がつく。
紗夜は続けた。
「だから、これを私が使えれば……自衛手段に……」
「いや。いい」
ハルトが、白いアイテムに手を被せる。
「足手まといとか言わないでよね。そもそも、そういう風になるのが当たり前なんだから」
紗夜は口を噤む。
「そもそも、疎まれるべきなのは、俺みたいな変な力を持っている奴であって、狙われて何もできない人じゃない。そこ、勘違いしないでね」
「でも……」
紗夜は白いアイテムの握る力を強める。
ハルトは続けた。
「だから、君はそのまま。巻き込まれない、ただの人間でいいんだよ」
『ドライバーオン プリーズ』
ハルトはそう言いながら、スイムスイムの攻撃を受け流す。
「変身!」
『ウォーター プリーズ』
出現する魔法陣。飛び込んでくるスイムスイムに、バリアのように出現させ、そのまま水のウィザードとなる。
『スイ〜スイ〜スイ〜スイ〜』
そのまま、スイムスイムとの戦いへ赴いた。
幾重にも重なる金属音。それがどんどん遠くなっていく。
やがてウィザードが、スイムスイムと戦いながら、どんどん紗夜から離れていく。
ウィザードは、スイムスイムを出てきた倉庫へ蹴り飛ばす。液体化が間に合わなかったのか、フェンスを押し倒しながら、スイムスイムは倉庫の中へ戻っていった。
残された紗夜は、ただ一人、ウィザードとスイムスイムの戦いの方向を見守っていた。
「へえ……」
その時、そんな声が紗夜の耳に届く。
背後に感じた気配。そこに彼はいた。
白と黒のピエロ。暗い倉庫の中、その白い傘だけがあたかも明るさを醸し出しているようにも見えた。
「やあ。氷川紗夜さん。本日はお日柄もよく」
「あなたは……ッ!」
その姿を見た途端、紗夜の表情がさらに見開かれる。
見滝原公園で出会った相手。晴れの日に理由もなく、白と黒の傘を刺すその男の顔を、紗夜は知っていた。
「トレギア……
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