暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
エピローグ
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
かった、わかったから八卦ちゃん、ちょっと待ってくれ……!」

 今一ついつもの威勢がないのは、とろんとした目と真っ赤な顔で隙あらば密着しにかかる少女をどうにか押しとどめながらだろう。しかし、酒の力にもいつかは終わりが来る。騒ぐだけ騒いでついに限界が来たのか抱き着こうとする格好のままずるずると倒れ込みながら、消え入りそうな声で最後の言葉をつぶやいた。

「らってわたひには、もうおじいちゃんがいなくなっちゃったんですもん……」
「っ!」

 言葉を失い、固まる糸巻。
 彼女とて、わかってはいたのだ。あの老人、狂った哀れな七宝寺に引導を渡すということが、少女にとってどんな意味を持つのかということは。それでも、彼女たちはやらなければならなかった。それだけのことだ……などと、割り切れたら楽なのだが。
 彼はこれから、国家権力の元でその罪を償うことになるのだろう。すべては彼自身の自業自得とはいえ突然に肉親を奪われ、それでも少女は今日まで気丈にふるまっていた。糸巻や鳥居へも恨み言ひとつ口にせず、これまで同様の態度で毎日のように顔を見せていた。しかし、八卦九々乃はまだ多感な中学生の少女だ。ここ13年間で必要以上の辛酸をなめつくし回想の全てがセピア色に染まった糸巻たち旧世代のデュエリストとは違い、人生が希望に満ちているべき子供。
 堪えていない、訳がない。力尽きた少女がすやすやと寝息を立て始めても、しばらく彼女はその場を動けなかった。これ以上何かが壊れてしまうのを、怖がっているかのように。

「「「……」」」

 そしてそれは竹丸も、鼓も、笹竜胆も同じだった。そもそも、彼女たちがカードショップ『七宝』での戦いに勝利していれば……無論それは、無意味な仮定だ。そもそも最前線の現役デュエルポリスが2人がかりでようやく辛勝できたような化け物相手に現職フランス支部長の『錬金武者』はともかく、現役を退いて久しい『十六夜の決闘龍会』ではさすがに荷が重いだろう。事実、彼女たちはあの時あの場所で老人に負けたのだ。それでも、そう割り切れるほど彼女たちの心は強くはない。割り切って目を背けるほど、弱くはないのと同じように。
 全員が全員後ろめたそうに目を伏せ、なんとはなしの沈黙と微妙な空気が立ち込める。そんな空気をぶち壊したのは、日頃から糸巻との付き合い方を心得ているがゆえに彼女が荒れだしたとみるや光の速さでその場を離れトイレを口実に店の奥まで緊急避難を決めていた鳥居の足音だった。

「い、いと、糸巻さん!ちょっとこっちでもテレビつけてください!ニュース、今ヤバいことになってるんすよ」
「あー?ちょっと悪いな八卦ちゃん、ゆっくり寝ててくれ……んで、ニュースがどうしたって?」
「はいはい、ちょっと待ってねリモコンは……っと」

 居候だけあって慣れた手つきで店
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ