エピローグ
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は古い仲だ。今無理に話しかけるとほぼ確実に返事の代わりに拳が飛んでくるだろうが、奴がまず人体のどこを狙ってくるか私は理解している。問題なく躱せるとも」
「……突っ込むのも野暮じゃが、そっちなのかえ?そちなら話を聞いてくれる、とかではなく?」
もぐもぐとドーナツを頬張りながら冷めた目とともに飛んできた笹竜胆の一言は黙殺し、それで、と少女の先を促す。おずおずと話し始めたその手には、何やら紙箱が握られていた。
「じ、実は八卦ちゃん、このチョコレートを食べてから調子がおかしくなって、それであんな風に……」
「どれどれ?む」
横文字の並ぶ、チョコレートの写真がプリントされたそれを何気なく受け取った鼓が、くぐもった声を漏らすなりぴたりと押し黙った。たっぷり10秒ほどその状態のまま、すらりと伸びた長身に端正な表情も相まって女神像か何かのように動かなくなる。
「あ、あの……?」
「ふむ、何事か気が付いたようじゃの。ま、放っておくがよい。こやつも悪い御仁ではないのだがのう、どうもあの妖怪生意気乳女が絡むと昔から隙が多くて困る。ところでお主、そこのちょこれいとの入った『まふぃん』をひとつ、取ってくれぬかの?。ついでに、もうちいとばかりわらわのそばに寄ってまいれ。その位置は少し、あの妖怪乳女どもに近すぎて危ないからの」
「は、はい。どうぞ……?」
言われたとおりにマフィンを手に近寄ると、その雅な雰囲気はそのままにバリバリの洋菓子を受け取る年齢不詳の美女。両手に持つ物がマフィンとオレンジジュース入りのコップでなければ、さぞかし絵になる光景だったろう。
「うむ、すまぬのう。ほれ、そろそろ面白くなりそうじゃぞ」
「つーづみー?お前今の言葉もいっぺん言ってみろオラ」
言い切るのとほぼ同時に、糸巻の割とキレ気味な声が妙に大きく店内に響く。
ほらの、と愉快そうに目を細めつつどこからともなく取り出した扇子を半開きにして口元に添え上品に笑みを隠す笹竜胆とは対照的にわけもわからずおろおろするばかりの竹丸だったが、すぐにその疑問は解消された。つい先日もニュースで見るのとまったく同じ理知的でぶっきらぼうな口調で、当の鼓が形だけごくごく軽く頭を下げつつ平然と丁寧に説明してのけたからだ。
「む、もう一度か?仕方ないな、すまん糸巻。その子が食べたウイスキーボンボン、それ私が税関で適当に見繕って買ってきた土産だ。一番安かった奴だがな」
「……アタシ言ったよな?子供がいるんだから酒は無しだぞって」
「安いだけあって期限が切れかけていてな。私1人では喰い切れないところだったからな。かなり度数がきつい奴だとは聞いていたが、まさかここまでとはな」
「ほーねえしゃまー、わたひのほうをむいてくらさいよー」
「あのなぁ!?あーわかったわ
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